1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610490
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
牧野 有道 明治大学, 文学部, 教授 (20092471)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上岡 伸雄 明治大学, 文学部, 助教授 (50177573)
林 義勝 明治大学, 文学部, 教授 (10164972)
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Keywords | 20世紀のアメリカ / アメリカと戦争 / 戦争のレトリック |
Research Abstract |
20世紀、特にヴェトナム戦争以後のアメリカ合衆国の戦争の正当化のレトリックを考察する時、その技術の圧倒的優位さに対する素朴な信頼感が存在するように思われる。このことが明白に表れたのが湾岸戦争であった。テレビはスマート爆弾(レーザー誘導爆弾)が標的に命中した場面を繰り返しヴィデオゲームのように放映し、湾岸戦争はまるで肉体を伴わない安全な戦争、いわばヴァーチャル戦争のような感覚を一般大衆にもたらし、さらにその軍事的優位さを誇示することによって戦争支持への世論の動員に成功したのであった。しかしながら、スマート爆弾は標的を直接攻撃するため市民に被害は及ばないと喧伝されていたにもかかわらず、最近の研究ではこの型の爆弾が使用されたのは全体の8パーセントを占めるに過ぎず、F-117A最新型戦闘機の爆撃の正確度も、当初報道された90パーセントではなく60パーセントであったことも明らかにされつつある。さらに橋梁、発電所、通信施設、給水設備、石油精製所への空爆のため、実際にはイラクの軍事力を低下させるより市民生活への影響の方が大きく、こうした戦略の正当性すら問う声があがってきている。このような湾岸戦争の実態が明らかにされるにつれ、テクノロジー優位性やその意義への見直しが始まっており、1997年度以降さらにリサーチを進める際にこのような見解に十分注意を払う必要がある。特に、戦争正当化のレトリックの中でテクノロジー信仰が他のイデオロギーとどのような相互関係を持っているかも留意しながら、全体像を考察していくことが重要であろう。
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