1998 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ語の教授による聾唖者の言語・思考活動,及び健聴者との手話・口話上の交流
Project/Area Number |
08610511
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
渡邉 政憲 鳥取大学, 教育学部, 助教授 (90032325)
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Keywords | 手話 / ろう者 / ドイツ語 / 音声言語 / 口話 / 言語学 / 健聴者 / 言語感覚 |
Research Abstract |
聾者を身体的な欠損者とみないで、健聴者とは異質の言語手段を有した「言語的少数派」と定義し、彼らの人間存在は、無音感覚的・視覚依存的本姓と手話言語にある。これが本研究に通底する筆者の理念である。これに依拠して、今年度も継続的に、以下のテーマに従事した。 1 聾者の二重言語修得Zweisprachigkeitは現実的課題であり続ける。しかし同時に、手話の公的な承認は、健聴者の手話修得の試みと同義であらねばならない。 2 聾者と健聴者のそれぞれの第二言語はどの水準まで修得されるべきか。 3 聾者手話と音声言語対応手話の依存と相違の位相は手話研究の本質を形成する。 4 聾者手話の意味論・統語論・音韻論的な構造が聾存在と根幹的に関連しあっている。従って、手話研究は同時に聾者の感性的及び認知的な聾存在の研究を伴う。 5 手話の地域的・国際的異形にもかかわらず、聾の外国人同士が手話コミュニケーションできる実情は、手話を国際的な視座から検討する意義を明らかにしている。 その結果、今年度は次の成果を得た: 1 聾者との交流と指導を通して、聾者の二重言語修得に更なる果実を得た。 2 聾者との交流を通して、筆者自身の手話運用能力を一段と身につけた。 3 東京大学と九州大学に出張して、言語の意味論・統語論・音韻論に関する資料を収集し研究した。 4 論文を2編発表した。ドイツ語で執筆した1遍は日本で希有なドイツ語論文であり、他の1遍は文学論集の中で特別に評価されて掲載を許されたものである。 5 手話の国際比較の観点から、ドイツ語圏の手話及び手話学事情を、ドイツ・オーストリアの大学機関から情報提供してもらって、現在分析中である。
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[Publications] 渡邉政憲: "聾アイデンティティと2つの手話言語の共存" 日本独文学会中国四国支部ドイツ文学論集. 31巻. 75-83 (1998)
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[Publications] 渡邉政憲: "Kofliktbegleitende Neuorientierung in Richtung Zweisprachigkeit" 鳥取大学教育学部研究報告(人文・社会科学). 49・1号. 143-158 (1998)