1997 Fiscal Year Annual Research Report
ルーメンからのメタン生成の微生物的および化学的制御に関する研究
Project/Area Number |
08660327
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
板橋 久雄 東京農工大学, 農学部, 教授 (00280991)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒川 勇三 東京農工大学, 農学部, 助手 (00234592)
神田 修平 東京農工大学, 農学部, 助手 (20015118)
鎌田 寿彦 東京農工大学, 農学部, 助教授 (70015121)
|
Keywords | メタン / 反芻動物 / ルーメン微生物 / フマ-ル酸 / ブロモクロロメタン / サオクロデキストリン |
Research Abstract |
牛などの反芻家畜のルーメン(第一胃)から放出されるメタンは飼料エネルギーの損失のみでなく、地球温暖化の一つの原因物質として問題になっている。そこで、反芻家畜の生産性を低下させることなく、メタンを抑制する方法について検討した。本研究では主に飼料への数種の化合物の添加およびルーメンプロトゾアの除去がメタン生成の抑制とルーメン発酵などに及ぼす影響を調べた。 1.フマル酸添加の影響:ルーメン内容液を塩類溶液で希釈後、フマル酸(FA)を添加し、嫌気的に6時間培養した結果、総ガスと水素の生成量は変化しなかったが、メタン生成量はFAの0.1%添加で約50%に低下した。また、牛の飼料にFAを添加するとルーメン内プロピオン酸の濃度が高まり、乳量も約9%増加し、飼料繊維の消化率も上昇した。 2.αーサイクロデキストリン(αーCD)包接化合物添加の影響:In vitro培養でαーCD包接ブロモクロロメタン(BCM)1〜10ppmを添加するとメタン生成は80〜90%減少したが、水素生成量は増加した。αーCD包接ジクロロメタン1ppmの添加ではメタンは約60%減少し、水素生成量の増加は少なかった。また、育成牛の飼料にBCMを1日4gずつ添加給与した結果、メタン生成は90%以上減少したが、添加終了後には添加前の水準に戻った。BCMの添加により、ルーメン内の揮発性脂肪酸VFAの濃度はやや低下したが、プロピオン酸の比率は有意に高まり、酢酸の比率は有意に低下した。なお、ルーメン内にプロトゾア(原生動物)が存在しない場合、メタン生成は約20%低下することが認められた。 以上より、これらの化合物はルーメンからのメタン生成を効果的に抑制することが明らかになったが、牛の採食性や繊維の消化に及ぼす影響についてはより長期にわたる飼養試験が必要と考えられた。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] Kim,H.D., J.K.Ha and H.Itabashi: "The effects of popping treatment of-soybean protein on peptide production in the ruminants" Proceedings of satellite Symposium of gth Animal Science Congress of AAAP. 31- (1996)
-
[Publications] Ogata,K., et al.: "Structural organization of PRAM4, a cryptic plasmid from Prevotella ruminicola." Plasmid. 35. 91-97 (1996)
-
[Publications] 板橋 久雄: "ルーメンとその代謝機能 1.炭水化物の代謝" 臨床獣医. 15巻4号. 65-75 (1997)
-
[Publications] 板橋 久雄: "反芻家畜からのメタンの発生とその制御" 畜産における温室効果ガスの発生制御(畜産技術協会編)第2集. 20-31 (1997)
-
[Publications] Onodera,R., Itabashi,H. et al. (eds.): "Rumen microbes and digestive physiology in ruminant" Japan Scientific Societies Press /S.Karger, 259 (1997)
-
[Publications] 水間豊 ら編: "最新畜産学(分担執筆)" 朝倉書店, 252 (1998)
-
[Publications] 板橋 久雄 ら著: "ルーメン 5" (デ-リィ・ジャパン社), 206 (1998)