1996 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病の胎児の奇形発生機構における酸化的ストレスとアポトーシスの関与
Project/Area Number |
08671172
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
赤澤 昭一 長崎大学, 医学部附属病院, 講師 (10145261)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 宇史 長崎大学, 医学部, 教授 (00158908)
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Keywords | 胎芽 / スカヴェンジャーシステム / 20%O_2 / 奇形 / 神経管閉鎖不全 / グルタチオン(GSH) / フリーラジカル |
Research Abstract |
器官形成期のembryoのエネルギー産生経路は嫌気的解糖経路で行なわれており、TCA cycle-電子伝達系の活性はほとんど存在していない。従って抗酸化機構は未熟である事が推定される。器官形成期の胎児の発育は低酸素状態(5%O_2)では正常に発育するが、より高い濃度(20%O_2)でembryoを培養すると奇形(神経管閉鎖不全)を生じる事が知られている。今回、酸素によるembryoの奇形の発生機序をフリーラジカルの産生とグルタチオン(GSH)依存性スカヴェンジャーシステムの面より検討した。器官形成期に相当する妊娠第9.5〜11.5日のラット胎芽を用い、正常ラット血清を75%に希釈した標準培養液中で回転培養を行い、胎芽の発育、奇形を検討した。細胞内のフリーラジカルはコラゲナーゼで細胞を単離し、DCFA-DAを添加し蛍光強度をFACS scanにて測定した。(1)胎芽の発育、奇形に関しては、コントロール群(5%O_2)ではほぼ正常の発育を示したのに対し、20%O_2群では頭臀長、体節数共に有意に減少しており、大奇形(神経管閉鎖不全などの脳神経系の奇形)10.0%、小奇形(脳神経系以外の奇形)38.6%と奇形は非常に増加していた。20%O_2+BSO(GSH合成酵素阻害剤)群では、さらに著しい発育遅延と奇形の増加(大奇形24.4%、小奇形57.8%)を認めた。20%O_2+GSH ester群では、発育遅延の改善と奇形の著名な減少(大奇形0%、小奇形8.9%)を認めた。(2)各群胎芽の細胞内のフリーラジカルを比較すると、コントロール群に比べ、20%O_2群では、フリーラジカルが増加しており、20%O_2+GCH ester群では増加していたフリーラジカルがコントロール群と同程度にまで減少していた。(3)20%O_2群では、GSH合成酵素γ-GSSの酵素活性およびこれらのmRNA発現量の軽度の増加を認めた。GSH濃度は20%O_2+GSHester群ではGSH濃度はコントロール群と同程度にまで回復していた。酸素による奇形の発生機序はフリーラジカルの産生に対し、胎芽の未熟な時期のスカヴェンジャーシステムが十分反応して増加しない事がその原因と考えられた。
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[Publications] Miwa Ishibashi,Shoich Akazawa,et al: "Oxygen-induced embryopathy and the significonce of Glutalhione-dependent antioxidant system in the rat embryo during early organogenesis" Free Radical Biology & Medicine. 22(3). 447-454 (1997)
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[Publications] 赤澤昭一: "糖尿病と奇形-その因果関係(動物)" 周産期医学. 26(3). 349-354 (1996)
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[Publications] 赤澤昭一: "糖尿病の療養指導'96" 診断と治療社, 5 (1996)
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[Publications] 赤澤昭一: "糖尿病治療事典" 医学書院, 1 (1996)