1996 Fiscal Year Annual Research Report
心停止後摘出肺の機能について(肺移植ドナー拡大に向けて)
Project/Area Number |
08671543
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
門倉 光隆 昭和大学, 医学部, 専任講師 (60214417)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷尾 昇 昭和大学, 医学部, 助手 (90255729)
野中 誠 昭和大学, 医学部, 助手 (20266117)
森保 孝治 昭和大学, 医学部, 助手 (00255738)
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Keywords | 肺移植 / 肺保存 / 心停止後温阻血 / LPD灌流 / 病理組織学的検討 / 中毒死(薬物死) / 急速脱血 |
Research Abstract |
心停止後温阻血下の放置時間については、犬を使用した研究で2時間、さらにその後8℃、4時間の肺保存による肺移植への可能性が示唆されている。しかし、心停止(循環停止)の方法が通常の臨床面での現象に対応するかどうかは問題であり、中毒死(薬物死)あるいは出血死など、ショック状態の環境を考慮した条件設定も必要と考えられる。そこで、本年度は実験材料の妥当性を中心に検討した。 対象動物は日本白色系兎を用いてsodium pentobarbital静脈麻酔後に気管切開を行い、人工呼吸器に接続した。この前処置後、(1)脱血死、(2)過量の静脈麻酔薬による心停止を行い、ドナー肺の変化を病理組織学的に検討した。 (1)の場合、とくに急速脱血による心停止では肺の変化も軽微であると判断されたが、低血圧や喘ぎ呼吸(死戦期)の時間が長いものでは肺出血を来するものがみられた。 (2)の場合、薬物投与から心停止まで1分以上時間を要した症例では肺水腫や肺出血を来するものがみられた。以上のことから、死因ことに心停止に至る経過がドナー肺の機能に大きく影響することが示唆された。 通常、心停止から心肺摘出まで臨床上さまざまな手続きから2時間は必要と考えられ、本実験でも2時間の人工呼吸管理群を加えて検討した。 呼吸条件は Tv=7 ml/kg, 25 bpm, room air, 0.5 cmH^2Oとし,上記前処理後薬物死させ,(1)心停止直後に胸骨正中切開し,肺動脈本幹より低分子デキストラン(LPD)を60cmH^2O, 40ml/kg, 10℃で灌流した。その直後,心ならびに両側肺を一魂として摘出し,病理組織学的検討を行った。(2)(1)と同様に心停止を得た後,2時間の人工呼吸管理(上記呼吸条件)を施行し、心肺摘出後に病理組織学的検討を行った。(3)として(1)と同様に心停止後、2時間無換気下に室温で放置した場合、LPD灌流開始直後より気道内へLPD液の流出を認め、再灌流モデルへの応用は困難と考えられた。(1)では灌流による障害はみられなかったが、(2)では肺胞の過膨張とともにLPD液が肺胞内へ流出するものもみられ、この所見を基にLPD液灌流圧を 30 cmH^2O としたところ、肺胞内への流出は消失するとともに、組織学的にも明らかな異常はみられず、再灌流モデルへの応用が可能と判断した。
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