1996 Fiscal Year Annual Research Report
子宮頸癌の発症過程におけるヒトパピローマウイルス感染と宿主及び環境因子の関与
Project/Area Number |
08671860
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
今野 良 東北大学, 医学部・附属病院, 講師 (70271905)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 忠夫 東北大学, 医学部・附属病院, 助手 (40282058)
佐藤 信二 東北大学, 医学部, 講師 (10142960)
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Keywords | 子宮頚癌 / 異形成 / ヒトパピローマウイルス(HPV) / p53 / アポトーシス / bcl-2 |
Research Abstract |
1,子宮頚癌へ進行する危険因子としての地理、年齢、異形成の程度、HPV 異形成症例の経過追跡調査と多変量解析により、癌に進行する危険因子としては初回生検標本で異形成が高度であることと、HPV感染の存在が独立した危険因子であることが明らかとなった。なお、子宮頚癌の発生率が高いエクアドルと日本の比較において、HPV感染率に差はなく環境因子、食生活などの違いを検討する必要が示唆された。 2,子宮頚部扁平上皮癌の発癌過程におけるp53の関与 子宮頚部扁平上皮癌を対象とした癌抑制遺伝子p53の遺伝子解析の結果、4%の点突然変異しかみられなかった。したがって、子宮頚癌の発癌過程におけるp53の関与は遺伝子変異によるものではなく、HPVのE6遺伝子産物によるp53蛋白の不活性が主たるものであることが示唆された。 3,子宮頚癌および前癌病変におけるHPVの存在、p53、サイクリンD1、Ki-67、Bc1-2の発現およびアポトーシス 子宮頚部浸潤癌、上皮内癌、異形成において癌の進展に関与する生物学的パラメーターの違いを解析した。細胞周期の促進因子であるサイクリンD1および癌抑制遺伝子p53の発現蛋白はともに各病変で差が見られなかったTUNEL法によるアポトーシスの検出では病変が進行するにともない減少していた。一方、アポトーシス抑制遺伝子であるbc1-2遺伝子の蛋白発現および細胞増殖因子Ki-67は病変進行にともない増加しており、アポトーシスと逆相関の関係にあった。以上の結果から、HPV感染により異形成が生じて細胞増殖が亢進する。さらに、アポトーシスが抑制されることにより、異型細胞が排除されずに増殖が持続することが癌化を促進させる機序の一つであると思われた。 以上、本年度の研究によって子宮頚癌の癌化過程にはHPV感染に加えて、アポトーシスおよび関連遺伝子が深く関与していることが明らかとなった。
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