1997 Fiscal Year Annual Research Report
ラミネート型染着拡散モデルによる羊毛繊維集合体の染着機構の解析
Project/Area Number |
08680059
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Research Institution | Niigata Women's College |
Principal Investigator |
佐々木 博昭 県立新潟女子短期大学, 生活科学科, 教授 (20123218)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 啓 平安女学院短期大学, 生活学科, 教授 (20213077)
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Keywords | 繊維集合体 / 羊毛 / 酸性染料 / 拡散境界層 / 染着機構 |
Research Abstract |
繊維集合体への染料の拡散では、繊維表面に拡散境界層が存在し、染色初期に染着遅れが生じること知られている。一方、羊毛の染色では繊維表面のスケールのため、これが浸透吸着バリアとなって初期染着遅れを生じる。すなわち、羊毛繊維集合体の染色では、これらの2つの要因で初期染着遅れとなる。したがって、本年度はまずコロナ放電処理により表面の撥水性を高めた羊毛繊維の平衡染着量および染色速度を測定した。その結果、平衡染着量はほとんど同じであったが、コロナ放電処理した羊毛への酸性染料の吸着速度は未処理羊毛に比べ大きいがその差はわずかであることがわかった。さらに、グリセロールポリグリシジルエーテル(GPE)で処理した羊毛を透過型電子顕微鏡で観察した結果、GPEはコルテックス内部の細胞膜錯合体(CMC)やマクロフィブリル間の領域、さらにマクロフィブリル内部へも侵入していることが見出された。また、食塩の存在下で反応は繊維外周部に局在化されていることがわかった。これらの知見を総合することにより、CMCを通過して浸透拡散する機構が確認された。このことについては、さらに逆相液体クロマトグラフィーにより確認した。昨年度は、羊毛繊維集合体の染着機構を解明するため、羊毛の多層構造を幾分簡略化した脱スケール羊毛を用い積層布への酸性染料の拡散の理論的考察を行った。これらの結果は、通常の羊毛布についてもラミネート型染着拡散モデルは適用できることを示しており、かつ繊維への染料拡散を包括しながら、繊維集合体の染色に関し実用的にも有用な知見を得ることができるといえる。
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