1996 Fiscal Year Annual Research Report
血管新生における細胞間接着分子、特にカドヘリン・カテニン系の機能に関する研究
Project/Area Number |
08770522
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
長嶋 浩貴 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (30246491)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川名 正敏 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (20152978)
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Keywords | 血管新生 / 接着分子 / カドヘリン / カテニン / プラコグロビン / アンチセンス / セリン・スレオニン リン酸化 / プロテイン・カイネース・C |
Research Abstract |
細胞間接着分子、特にカドヘリン・カテニン系は、ただ単に細胞の機械的接着を制御するだけでなく細胞間情報伝達系を担っており、細胞の分化・発生・増殖に非常に重要な機能を持つ。一方、血管新生は、固形腫瘍・動脈硬化・創傷治癒などで、その形成に大きく関わっている。血管新生は、血管内皮細胞の増殖・遊走・管腔形成の3段階に分けて考えることができるが、いずれの段階においても、細胞間接着分子が重要な機能を持つ可能性が考えられる。そこで、我々は、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を培養し、α-カテニン、β-カテニン、γ-カテニンの発現をantisense oligonucleotideで抑制したときのHUVECの形態、およびHUVECの増殖・遊走・管腔形成に対する影響を検討した。antisense oligonucleotideにより、α-カテニン、β-カテニンの発現は抑えることができなかったが、γ-カテニンの発現は蛍光抗体染色およびRTPCRでほぼ完全に抑制し得た。その結果、HUVECの遊走・管腔形成を明らかに抑制した。このことは、血管新生においてγ-カテニンが重要な機能をもつことを意味している。また、Protein kinase Cによって血管新生は促進され、その際、γ-カテニンのリン酸化は促進された。さらにこの血管新生促進作用が、γ-カテニンに対するantisense oligonucleotideの投与で消失することにより、γ-カテニンを介した作用であることが予想された。その他のセリン・スレオニンリン酸化酵素であるカルシニューリンの阻害剤FK506によってもγ-カテニンのリン酸化は促進されるが血管新生は促進しなかった。Protein kinase Cによるγ-カテニンを介する血管新生促進作用においては、γ-カテニンのリン酸化そのものが重要なのではなく、γ-カテニンを介する情報伝達系の他の分子に対しProtein kinase Cが促進的に作用しているものと考えられた。
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