1997 Fiscal Year Annual Research Report
知的所有権制度の再構成--「情報の経済学」からのアプローチ
Project/Area Number |
08831001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松村 良之 北海道大学, 法学部, 教授 (80091502)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古城 誠 上智大学, 法学部, 教授 (80013027)
田村 善之 北海道大学, 法学部, 助教授 (20197586)
林田 清明 北海道大学, 法学部, 教授 (50145356)
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Keywords | 情報の経済学 / 知的所有権 / 法執行 / 差し止め / 損害賠償 / 行為規制 / 取引費用 |
Research Abstract |
昨年度のミクロ経済学、情報の経済学の観点からの理論的分析を前提して、現行の知的財産権法システムの批判的検討と、あるべき法システムの制度設計を行った。第1に、現行の知的財産権法は有体物に対する物権の法技術を借用しているが、そのような立場では情報の経済学的性質にそくして理論構成、概念構成を行うことは困難であること、とりわけ「占有」とか「排他権」に関してその欠陥が現れていることを示した。第2に、物権的構成が借用でるとすれば、特許権や著者権のような登録制度を媒介とする譲渡可能な財産権という制度設計が唯一のものではなく、不正競争防止法のような単なる行為規制も、外部経済の内部化のための法的制度設計としてあり得ることを示した。さらに、独占禁止法も行為規制であり、そのような観点から、知的財産権システムと独占禁止法を統合しうることを示した。第3に、法的制度設計においては広い意味で取引コストが重要であることを示した。それは、法執行の分析が重要であることを意味する。そこでまず分析されるのは、私的執行(現行特許、著作権)と公的執行(独占禁止法関係)の効率性である。そして、違法複製抑止のインセンティブを考慮すると、私人の方がモニタリング機構として効率的であることが示された。第4に、第2,第3に述べたことを、合わせると、規制は行為規制を中心とし、救済は民事訴訟が中心となるべきであることがわかった。第5に、訴訟の外部効果(一般抑止効果)を考慮すると、損害額の補填されるという制度のもとでは訴訟は社会的に最適な水準よりも過少になるから、3倍賠償のような制度が参考されるべきである。第6に、救済としての差し止めと損害賠償の比較については、当事者間のバ-ゲニングパワーとサーチコストの裁定者と両当事者への分配のありように依存していることが示された。
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[Publications] 松村良之、太田勝造、岡本浩一: "裁判官の判断構造-『スジ』『スワリ』をてがかりにして" 法社会学. 48号. 198-202 (1997)
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[Publications] 松村良之、太田勝造、岡本浩一: "裁判官のエキスパーティーズとは何か" 人工知能学会誌. 13巻2号. 165-172 (1998)
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[Publications] 林田清明: "損害賠償の経済学" 山田卓生編『新・現代損害賠償法講座1』(日本評論社). 319-348 (1997)
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[Publications] 林田清明: "インターネット上のプライバシー問題" 法学セミナー. 516号. 126-127 (1997)
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[Publications] 田村善之: "著作者死亡後の著作者人格権侵害に相当する行為に対する救済" 斉藤博、牧野利秋編『知的財産関係訴訟法(裁判実務大系27)』(青林書院). 319-329 (1997)
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[Publications] 田村善之: "知的財産侵害に訴訟における過剰差し止めと抽象的差止め(上)・(下)" ジュリスと. 1124号,112号. 89-97,129-137 (1997)
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[Publications] 田村善之: "著作権侵害19〜27" 発明. 94巻4号〜12号. 82-89,76-81 (1997)
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[Publications] 田村善之: "競争的利益" ジュリスト. 1126号. 89-96 (1998)
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[Publications] 林田清明: "法と経済学:新しい知的テリトリ-" 信山社, 328 (1997)