1999 Fiscal Year Annual Research Report
細胞骨格の分子細胞生物学及び分子遺伝学的研究;細胞内物質輸送、情報伝達及び細胞の形作りの機
Project/Area Number |
08CE2007
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
廣川 信隆 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (20010085)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 玲子 (佐藤 玲子) 東京大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (40230718)
寺田 純雄 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (00262022)
中田 隆夫 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (50218004)
岡田 康志 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (50272430)
吉川 雅英 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (80272425)
|
Keywords | キネシンスーパーファミリー蛋白,KIFs / 細胞内物質輸送 / 微小管 / ジーンターゲティング / KIF1A / KIFC3 |
Research Abstract |
1.Kinesin Superfamily Proteins(KIFs)の中でユニークなモノマー型(1本足モーター)であるKIF1Aの作動機構を明らかにした。 1)KIF1Aモーター領域1分子の微小管上での運動の解析 従来発見されていたモーター分子はKinesin,DyneinやActin上を動くMyosinにいたるまでダイマー型(2本足モーター)でありその作動機構としては人間が歩くように動く2本足歩行モデルが提唱されていた。しかし私達は細胞内でモノマー(1本足)として存在するKIF1Aモーターを発見したので、このモーターが一定距離(1μm以上)微小管上をモノマーとして動く事が出来るかを生物物理学的に解析した。KIF1Aのモーター領域(C351)を蛍光1分子で標識し微小管上を動くか解析したところ、微小管のプラス端に向かって1μm以上processiveに動く事を証明できた。しかも、この動きはBiased Brownian運動である事が明らかになった。モノマーでも微小管のレールからはずれずに動ける機構としてマイナスに荷電している微小管の表面と強く相関するプラスに荷電する部分があることを想定して調べたところ、リジンが7個ならぶK loopがあった。このK loopの欠失ミュータントを作り運動性を解析するとkの数が減少するに伴いprocessivityは減少しまた、このK loopが微小管との弱い結合時に特異的に微小管との結合に影響を与えている事が判明した。また、ADP結合の弱い結合状態時は、KIF1Aは微小管上を完全なBrownian運動をするだけであり、ATPの加水分解のサイクルにより微小管プラス端へ動く方向性が生ずることが分かった。 2)KIF1Aモーター領域と微小管との複合体のクライオ電顕による三次元構造解析 KIF1Aモーター領域と微小管との複合体を急速凍結し、凍結したままクライオ電顕で観察し三次元再構成を行い、微細構造を明らかにした。同時に2本足モーターであるキネシンのモーター領域と微小管複合体の構造も比較解析した。その結果、KIF1A、キネシンとも共通な微小管との結合領域MB1とMB2を有し、MB1は微小管プロトフィラメント表面に結合しMB2は側方からプロトフィラメントに結合する事がまず分かった。その他KIF1Aにはキネシンにない第3の微小管との結合領域MB3が存在
… More
し、このMB3がK loopにより構成され、プロトフィラメントに側方から結合している事が明らかになりKIF1AはモノレールのようにMB2とMB3により左右からプロトフィラメントに結合する事が出来るため弱い結合状態の時もキネシンよりずっと安定して微小管の上を動くことが出来ることが示された。このようにして1本足モーター分子の作動機構が明らかとなり、これはモーター分子の作動機構の理解に基本的見直しをせまるものである。 2.Kinesin Superfamily Proteins(KIFs)のうち、KIF3Aのgene targetingを行った。 KIF3A欠失マウスの解析; KIF3AはKIF3BとKAP3とともにheterotrimerを形成し、KIF3モーターとして働く。この機能を明らかにするためKIF3A欠失マウスを作製、解析した。KIF3A欠失マウスも胎児の内に死亡した。胎児の生存中に解析したところ、KIF5B欠失マウス同様発達が著しく遅れ、また発生学上多彩なphenotypeを呈した。中でも興味深いのは体の左右軸決定の乱れで左右決定の最初のサインである心臓のループ形成がDループ(正常)とLループ(逆位)が半々であった。これとkif3A-/-の関係を調べるため左右決定に重要である遺伝子カスケード(Lefty2等)の発現を調べた。本来左側に発現するLefty2が両側に発現されるかあるいは全く発現されない事が分かりKIF3AがLefty2等より上流の現象に関わっていることが明らかになった。そこで左右軸決定に重要な役割をもつNodeを解析したところ、野生型では1本の線毛をもつが、kif3A-/-ではこの線毛が形成されないことが分かった。KIF3Aの局在をNodeの上皮細胞で解析するとKIF3Aが線毛内に局在していることが分かった。つまりKIF3Aが線毛を形成する蛋白複合体を輸送していることが示唆された。野生型のMonociliumは9+0の微小管より構成されており動かないと考えられていたが、これを胎児が生きたままビデオ顕微鏡で観察すると時計方向に回転しておりその回転運動によってNode領域の胎児外液の右から左への流れが形成されていることが分かった。したがってKIF3AはKIF3BとともにNode上皮細胞の線毛の材料となる蛋白複合体を輸送し、線毛を形成しその線毛が時計方向の回転運動をすることによりNode流を作り分泌性のMorphogenの左側への濃度勾配を作りLefty1,2,nodal等の遺伝子カスケードのスイッチをONにするという機構が示された。 3.iv,invミュータントマウスの解析による体の左右決定におけるNode流の重要性の証明 ivミュータントマウスはKartagenar症候群のモデル系で体の左右決定が乱れる。その原因遺伝子は線毛の動きを発生するleft-right dyneinである。このマウスのNodeでは線毛が存在するが全く動かず従ってNode流がないことが示され、KIF3欠失マウスで得た結論が支持された。左右が逆転するinvマウスではNode流が極端に遅くなっており分泌性Morphogenは活性化されるまでに時間がかかるか、あるいは受容体に結合するのに時間がかかる性質を持つことが示唆された。iv,invの結果ともNodeo流が左右決定に重要である事を支持した。 Less
|
Research Products
(9 results)
-
[Publications] Okada,Y.and N.Hirokawa: "A processive single-headed motor : kinesin superfamily protein, KIF1A."Science,. 283. 1152-1157 (1999)
-
[Publications] Takeda,S.,Y.Yonekawa,Y.Tanaka,Y.Okada,S.Nonaka and N.Hirokawa.: "Left-right asymmetry and kinesin superfamily protein KIF3A : New insights in determination of laterality and mesoderm induction by Kif3A-/-mice analyses."Journal of Cell Biology,. 145. 825-836 (1999)
-
[Publications] Terada,S.,T.Tsujimoto,Y.Takei,T.Takahashi,and N.Hirokawa.: "Impairment of inhibitory synaptic transmission in mice lacking synapsin I."Journal of Cell Biology,. 145. 1039-1048 (1999)
-
[Publications] Hirokawa,N.: "Stirring up development with the heterotrimeric kinesin KIF3."Traffic,. 1. 29-34 (1999)
-
[Publications] Okada,Y.,S.Nonaka,Y.Tanaka,Y.Saijoh,H.Hamada,and N.Hirokawa.: "Abnormal nodal flow precedes situs inversus in iv and inv mice."Molecular Cell,. 4. 456-468 (1999)
-
[Publications] Okada,Y and N.Hirokawa.: "Mechanism of the single-headed processivity : Diffusional anchoring between "k-loop" of kinesin and the C-terminus of tubulin."Proceedings of the National Academy of Science of the USA. 97. 640-645 (2000)
-
[Publications] Kikkawa,M.,Y.Okada,and N.Hirokawa.: "15Å resolution model of the monomeric kinesin motor : KIF1A."Cell,. 100. 241-252 (2000)
-
[Publications] Takeda,S.,H.Yamazaki,D.-H.Seog,M.Kawagishi,Y.Kanai,S.Terada and N.Hirokawa.: "KIF3 motor transports fodrin-associating vesicles important for neurite building."Journal of Cell Biology,. (in press). (2000)
-
[Publications] Hirokawa,N.: "Taniguchi Symposia on Brain Sciences No.22; Challenges for Neuroscience in the 21st Century"Japan Scientific Society Press. 27 (1999)