1997 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア上座部仏教社会における社会動態と宗教意識に関する比較研究
Project/Area Number |
09041051
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Research Category |
Grant-in-Aid for international Scientific Research
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Section | Field Research |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
駒井 洋 筑波大学, 社会科学系, 教授 (20058100)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 規之 琉球大学, 法学部, 助教授 (60253936)
CHAVIVUN Pra 筑波大学, 地域研究科, 外国人教師
小野澤 正喜 筑波大学, 歴史・人類学系, 教授 (90037044)
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Keywords | 上座部仏教 / 僧侶 / 社会的影響 / オルターナテイブ運動 / 人権擁護 / 社会的和解 / サルボダヤ運動 / 基本的人間ニーズ |
Research Abstract |
本年は、タイ、カンボジア、スリランカにおいて実地調査をおこなった。主要な発見事項は以下のとおりである。 タイにおいては、僧侶の腐敗事件などが続発した結果、サンガの権威は大きく動揺し、上座部仏教の社会的影響力も低下が顕著である。その一方、お守りに頼ったりあるいは現世利益のみを求める行動がさかんとなっている。現在の拝金主義の蔓延は、その原因でありまた結果でもある。その一方、仏教的理念にもとづくオルターナティブな社会運動が注目を集めている。 カンボジアでは、復興過程のなかで上座部仏教は人びとに精神的支柱を提供し、また人びとの期待も大きい。プノンペンでは破壊されていた寺院の再建がほぼ完了し、また農村部でも再建が進行している。とくにポルポト期に大量に虐殺された僧侶については、社会をあげての養成がはかられている。仏教的理念にもとづき人権擁護や社会的和解を模索する運動やNGOが、社会的に影響を与えている。 スリランカでは、アジアの上座部仏教の発生地ということもあって、人びとの帰依はきわめて強い。とくに農村部のサルボダヤ運動というコミュニティ運動は、仏教的理論にもとづき精神的価値を重視する基本的人間ニーズを提唱し、スリランカ社会における大きな勢力となっている。
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