1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09041139
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
鈴木 仁 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 助教授 (40179239)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒泉 満 新潟大学, 理学部, 教授 (40175360)
土屋 公幸 宮崎医科大学, 医学部, 助教授 (30155402)
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Keywords | 北ユーラシア / 分子系統学 / 生物地理学 / 第四紀 / ロシア産小型哺乳類 / DNAマーカー |
Research Abstract |
本研究では、北ユーラシアに展開する小型哺乳類の集団間の遺伝的類縁関係を明らかにした。まず北海道も含め北ユーラシアに広域分布するハントウアカネズミ、タイリクヤチネズミ、タイリクヒメヤチネズミの3種について、地理的変異の解析を行なった。その結果、後者2種では種内変異のレベルは相当高かった。このことから第四紀の数百万年という長期にわたり、各地域集団が維持されていることが示唆された。一方、ハントウアカネズミでは種内変異のレベルが著しく低いことと、沿海州と朝鮮半島にのみ固有のタイプが維持されることから、氷期にボトルネック効果が生じ、この二つの地域(避寒地)にかろうじて集団が維持され、ついで間氷期となり、集団分布の拡大が起きたものと推察された。このことはこの種の現在の分布の北限が現在の永久凍土の分布とよく一致していることと、氷期の永久凍土の分布から推察される避寒地の候補地域が上記2地域であることからも、この種の遺伝的多様性のレベルは過去の環境変動と強い連動傾向があるということが強く示唆された。 北海道の小型哺乳類相はロシア極東地域の集団と関係が深いが、北海道には独自の遺伝的要素が存在し、さらに、ムクゲネズミのように種として固有なものも生息することから、これまで考えられてきたよりも、長い時間的スケールの中で、遺伝的多様性増大に貢献する地理的空間として機能していることが示唆された。 以上のように、それぞれの種は依存する生息物理環境の変動は集団の維持および絶滅に深く関連し、それが結果として遺伝的多様性の大きさに影響を与え、さらに、それぞれの地域の小型哺乳類相の形成の歴史を語る上でそれが重要な要素のひとつであることが判明した。一方で同地域に生息する類縁度の高い競争種の存在が集団の絶滅を考慮する上で重要な要素であることも明らかとなった。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Suzuki, H.: "Molecular phylogeny of red-backed voles in Far East Asia based on variation in ribosomal and mitochondrial DNA"Journal of Mammalogy. 80. 512-521 (1999)
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[Publications] Iwasa, M.A.: "A karyological analysis of the Korean red-backed vole, Eothenomys regulus (Rodentia, Muridae), using defferential staining methods"Mammal Study. 24. 35-41 (1999)
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[Publications] Suzuki, H.: "The genetic status of two insular populations of the endemic spiny rat Tokudaia osimensis (Rodentia, Muridae) of the Ryukyu Islands, Japan"Mammal Study. 24. 43-50 (1999)
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[Publications] Tsuchiya, K.: "Molecular phylogeny of East Asian moles inferred from the sequence variation of the mitochondrial cytochrome b gene"Gene and Genetic System. 74(印刷中). (1999)
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[Publications] Suzuki, H.: "A molecular phylogenetic framework for the Ryukyu endemic rodents Tokudaia osimensis and Diplothrix legata"Molecular Pylogenetics and Evolution. (印刷中). (2000)
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[Publications] Serizawa, K.: "A phylogenetic view on species radiation in Apodemus inferred from variation of nuclear and mitochondrial genes"Biochemical Genetics. 38(印刷中). (2000)