1997 Fiscal Year Annual Research Report
中国長白山の巨大噴火年代と渤海に関する年輪年代学的研究
Project/Area Number |
09044018
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
光谷 拓実 奈良国立文化財研究所, 埋蔵文化財センター・研究指導部, 室長 (90099961)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
代 力民 中国科学院応用生態研究所, 研究員
延 〓冬 中国科学院応用生態研究所, 研究員
趙 大昌 中国科学院応用生態研究所, 名誉研究員
工楽 善通 埋蔵文化財センター, センター長 (00000472)
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Keywords | 長白山 / 巨大噴火 / 火山灰 / 火砕流 / 渤海 / 北朝鮮 / 世界自然保護区 |
Research Abstract |
本年度は、1997年9月初旬に主に長白山の西麓で現地調査を行ない、現生のマンシュウカラマツの老齢樹からコア標本の採取や、新たにトネリコ類やナラ類などの標本採取をおこなった。火砕流堆積物中に埋没している炭化樹幹を4日間にわたって探し回ったが、確実に埋没していると推定していた箇所はほとんどすべて、現地人による軽石採取のため、地中深く荒らされてしまい、年輪年代学の調査研究に適した試料は数個しか採取できなかった。そこで、過去2回にわたって採取した場所は、北朝鮮との国境付近であったので、今回もその場所での試料採取を試みようとしたが、現在緊張関係にあるからきわめて危険であるとの指示があったため、断念せざるを得なかった。 採取した現生試料の年輪年代学的検討の結果、過去2回にわたって作成していたマンシュウカラマツの平均値パターン(1836〜1992)を1804〜1997年まで前後に延長できた。さらに採取した数個体の炭化材の年輪パターンは複雑すぎて良好な年輪データとはなり得なかった。一方、青森県下の出土材で作成していたヒバの暦年標準パターンは、岩手県下の出土材1点でその先端を814年まで古く延長できた。これをさらに700年あたりまで延ばす必要がある。今回採取したトネリコ類とナラ類が年輪年代学研究に適用可能がどうか検討した結果、両樹種とも可能であることが判明した。今後これらの樹種でもって長期の暦年標準パターンを作成していくことも重要となってきた。 考古学的に渤海に関わる調査では、長白山々麓に所在する渤海国の磚積み五重塔である光塔や宝馬古城跡を訪ね、それらが唐文化の影響を強く受けていることを印象づけた。また黒龍江省上京龍泉府遺跡や博物館を見学して、その遺構構造や出土遺物からわが国の古代都城跡との深い関係を知り得て、当国の盛衰を明確にすることの重要性を実感した。
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