1997 Fiscal Year Annual Research Report
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09410006
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
柴田 正良 金沢大学, 文学部, 助教授 (20201543)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柏端 達也 大阪大学, 人間科学部, 助手 (80263193)
戸田山 和久 名古屋大学, 情報文化学部, 助教授 (90217513)
大沢 秀介 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (50233094)
美濃 正 大阪市立大学, 文学部, 助教授 (70181964)
横山 輝雄 南山大学, 文学部, 教授 (80148303)
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Keywords | 背景的理解 / 行為の意図性 / 言語行為の一般理論 / フレーム公理 / 非単調論理 / 狭い内容 / 広い内容 / コネクションズム / クオリア |
Research Abstract |
今年度は、言語理解におけるフレーム問題の所在を、三つの局面において明らかにすることを目標とした。その第一は、意図的行為および意図の理解における背景理解(フレーム)の問題であり、第二は、非単調論理を用いたフレーム問題の(コンピュータ上での)解決案の評価という問題であり、第三は、フレーム問題の処理を現実的に行っている人間の脳の機能と心的表象(例えばクオリア)の関連の問題である。 1.第一の問題に関しては、黒積俊夫氏(名古屋大学教授:「「何故?」と「何のために」」)、武笠行雄氏(電気通信大学助教授:「発話の内容と目的について」)、および山田友幸氏(北海道大学教授:「行為分析における「他の事情によって妨げられないならば」という条件をめぐって」)に講演を依頼し、合同討議を行った。その結果、日常的行為の背景理解には、意図的行為成立の根本条件が深く関わっており、その究明には言語行為の一般的理論化が必要であることが判明した。 2.第二の問題に関しては、中山康雄氏(大阪大学教授:「フレーム問題再考」)に講演を依頼し、合同討議を行った。それにより、若干の単純化されたフレーム問題は非単調論理によって実際に解決可能であること、しかし、言語理解の現場というワイルドな環境においてはなおフレーム問題は未解決であることが判明した。 3.第三の問題に関しては、服部裕幸氏(南山大学教授:「古典的計算主義とコネクショニズム」)、岡庭宏之氏(金沢大学大学院博士課程:「心的内容とフォーダ-哲学」)、および田森佳秀氏(金沢工業大学講師:「色のクオリアと神経回路網の活動空間の多様体」)に講演を依頼し、合同討議を行った。その結果、脳における情報処理の実現と心的表象との相互関係の理解には、従来と異なる新しい脳/心のモデルが必要であり、そのためには脳/心の情報処理に関する複数の描像を統合しうる多層的な学際的アプローチが必要である、という認識が得られた。
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[Publications] 美濃正: "行為とは単に身体を動かすことにすぎないか?" 『人文研究』大阪市立大学文学部紀要. 49・3. 61-80 (1997)
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[Publications] 柴田正良: "「意味は自然物の一種だ」という観点から見ると意味の全体論はどう見えるか" 『意味の全体論』J.フォーダ-&E.ルポア著,産業図書. 369-400 (1997)
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[Publications] 横山輝雄: "進化論と近代日本仏教" 『生命論への視座』竹田純郎他編,大明堂. 134-152 (1998)
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[Publications] 横山輝雄: "生命と種の多様性" 『新・哲学講義5』伊藤邦武編,岩波書店. 111-133 (1997)
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[Publications] 戸田山和久: "悪循環原理、分岐タイプ、そして「ラッセルの構成主義」" 『哲学雑誌』哲学会編(有斐閣). 112・784. 91-110 (1997)
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[Publications] 相端達也: "行為と出来事の存在論" 勁草書房, 258 (1997)