1997 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本の精神構造の社会史的研究-戦争の記憶を中心に-
Project/Area Number |
09410090
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Research Institution | Koshien University |
Principal Investigator |
広田 昌希 甲子園大学, 人間文化学部, 教授 (30002744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨山 一郎 大阪大学, 文学部, 助教授 (50192662)
杉原 達 大阪大学, 文学部, 教授 (40113138)
上野 千鶴子 東京大学大学院, 人文社会系研究科, 教授 (90132307)
成田 龍一 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (60189214)
安丸 良夫 一橋大学, 社会学部, 教授 (10017626)
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Keywords | 近代日本 / 精神構造 / 社会史 / 戦争 / 記憶 |
Research Abstract |
本研究の目的である「戦争の記憶」の考察にもとづき、本年度は、平成9年12月と平成10年4月の二回、シンポジウムを行った。12月のシンポでは、アジア・太平洋戦争の経験がどのように戦後意識を構成していったかについて、被爆者、在日朝鮮人、強制連行を受けた中国人、沖縄出身者といった人々にとっての戦争の記憶と戦後意識をとりあげ、検討した。4月のシンポでは、コロンビア大学教授、キャロル・グラック、ニューヨーク大学教授、ハリ-・ハルトゥニアン、コ-ネル大学教授、ヴィクター・コシュマンの三氏を招聘し、近年の日本における戦後意識に関わる議論をとりあげて検討した(なお、元来3月来日の予定であったが、アメリカ側の研究者の都合でやむを得ず4月初旬となったことを付記する。)。その結果得られた知見、および今後の課題は、以下の通りである。1、まず「戦争の記憶」をめぐる言説分析において証言という領域が問題になった。この証言という問題においては、誰がどのような場で発する言葉かということがきわめて重要なポイントになる。2、こうした証言の領域に注目することにより、証言が発せられた場所を離れ、テキスト化されるという問題が浮かび上がる。そこには、証言とテキスト化がせめぎあうプロセスが、想定されている。3、こうしたせめぎあうプロセスを想定することは、理論的問題としては、言説をテキストとしてとりあげ分析するのではなく、発話された場所から言説を切り放さず、言説をある領域性の中での生成途上にあるものとしてとらえる新たなアプローチの重要性を示すものである。4、発話された場を歴史具体的に設定したとき、日本の戦後意識に関わって、アジア・太平洋戦争の記憶と戦後補償に関する言説領域との関係が問題になった。 以上をふまえ、平成10年度の課題として、テキスト分析に関わる理論的検討と、戦後補償と戦後意識の具体的分析を行わなければならない。
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[Publications] 広田昌希: "文化交流史研究の課題" 文化交流史研究. 1号. 1-14 (1997)
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[Publications] 広田昌希: "文明開化期のジェンダー" 江戸の思想. 6号. 79-95 (1997)
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[Publications] 安丸良夫: "民衆宗教と近代という経験" 天理大学おやさと研究所 年報. 3号. 75-88 (1997)
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[Publications] 安丸良夫: "「従軍慰安婦」問題と歴史家の仕事-「証言」と「実証」をめぐって-" 世界. 646号. (1998)
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[Publications] 成田龍一: "帝国主義/植民地主義/ナショナリズム" 世界. 640号. 98-102 (1997)
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[Publications] 杉原達: "思想としての「現場探訪」" 思想. 877号. 1-3 (1997)
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[Publications] 冨山一郎: "「琉球人」という主体" 思想. 878号. 5-33 (1997)
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[Publications] 冨山一郎: "動員される身体" 池田浩士・他編『ファシズムの想像力』. 126-154 (1997)
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[Publications] 杉原達: "中国人強制連行解明の新段階に向けて-問題提起-" 『報告集・中国人強制連行国際シンポジウム大阪集会』. 42-45 (1997)
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[Publications] 島薗進: "オウム真理教と超越への希求" 色川大吉・宮田登編『現代の世相.8.転換期の世相』. 33-64 (1997)
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[Publications] 島薗進: "近代日本の修養思想と文明観-新渡戸稲造の場合-" 脇本平也・田丸徳善編『アジアの宗教と精神文化』. 406-431 (1997)
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[Publications] 冨山一郎: "伊波普猷を読む" 月刊図書. 1月号. 16-20 (1998)
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[Publications] 島薗進: "現代宗教の可能性-オウム真理教と暴力-" 岩波書店, 202 (1997)
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[Publications] 小路田泰直: "日本史の思想" 柏書房, 244 (1997)
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[Publications] 上野千鶴子: "ナショナリズムとジェンダー" 青土杜, 229 (1998)