1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09410114
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
谷川 恵一 国文学研究資料館, 文献資料部, 教授 (10171836)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
源 貴志 早稲田大学, 文学部, 助教授 (40239322)
金 文京 京都大学, 人文科学研究所, 助教授 (60127074)
鈴木 広光 九州大学, 文学部, 講師 (70226546)
澤田 和彦 埼玉大学, 教養学部, 教授 (70162542)
木村 崇 京都大学, 総合人間学部, 教授 (80065234)
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Keywords | 近代文体の成立 / 日本文学と漢語 / 江戸文学と近代文学 / 二葉亭四迷 |
Research Abstract |
平成10年9月、および平成11年3月に、二度のワークショップを行い、主として「あひびき」を対象として、研究分担者から提出された報告を元に全員で討議し、注釈の形式に整えていく作業を行った。その結果、以下の諸点が新たに確認され、さらに調査を進め、最終的な注釈を仕上げていくことになった。 1. 二葉亭の翻訳作法をより精密に究明するためには、「あひびき」と「めぐりあひ」のロシア語原文のコンコーダンスを作成し、それらの語彙を『露和字彙』(明治20年刊)と対照させる必要があること。 2. ツルゲーネフの原文のもつ韻律を二葉亭が日本語のリズムに移そうとした形跡が窺えるが、それをより明確に跡付けるためには、パンクチュエーションの問題を含めた二葉亭の訳文のもつリズムを分析する必要があること。 3. 「あひびき」の会話文は主として人情本の系譜に連なるものであり、そのことがもつ意味合いを確定することが、このテクストの意味作用にとって決定的に重要であること。 4. ツルゲーネフが描くロシア社会、とりわけ農奴制についてどのような理解の水準にあるのかが二葉亭の翻訳テクストの読みを決定づけるので、二葉亭を含めた同時代のロシア情報の水準を新聞や雑誌から調査する必要がある。 5. 二葉亭の訳文に使用された漢語は、漢詩文の伝統的な意味作用に依存して翻訳テクストの文学性を確保しようとして使用されているが、そうした漢語の借用の問題をより詳細に調査する必要がある。 この他、二葉亭の訳文に使用されている語彙について、同時代テクストの用例の調査をひきつづき行った結果、二葉亭の訳文の位相が次第に明確になりつつある。 以上のような研究の進捗状況にもとづき、各研究分担者が担当する具体的な課題と注釈事項を確定した。次年度からは注釈原稿を共同で検討する作業に入る予定である。
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