1998 Fiscal Year Annual Research Report
海洋動物を起源とする高分子合成阻害物質の開発と作用機作の解析
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09460057
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
池上 晋 広島大学, 生物生産学部, 教授 (80011980)
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Keywords | ヒトデ / 胚 / 阻害 / 海綿 / メタロエンドプロティナーゼ |
Research Abstract |
イトマキヒトデ受精卵は、卵割期、胞胚期を経て原腸胚を形成する。この原腸形成の段階で胚発生を選択的に停止させる活性成分として、さきに、トリテルペンエーテル化合物Hippospongic acid AをHippospongia属海綿から精製・単離し、これが新規化合物であることを確認し、その化学構造を提出した。しかし、NMRスペクトルを精査したところ、構造式に誤りが見出されたので、今回、これを訂正した。訂正構造にもとずいて合成された標品は天然物と一致したので、改訂構造式が正しいことが確定した。 イトマキヒトデ胚の原腸形成を阻害する活性物質として、Rhopaoeides属海綿からRhopaloic acidBおよびCを得、それらが新しいノルセスタテルペンであることを明かにした。これらは4-5個のC-C二重結合と1個のカルボキシル基を有するが、二重結合を水素添加したり、カルボキシル基をエステル化すると原腸形成阻害活性が失われることなどから、テトラピラン環に結合したα-オキソ-メチレンカルボン酸構造が活性の発現に重要であることが示唆された。 バフンウニの胚では胞胚期において、胚の外周辺に形成された受精膜の溶解、すなわち孵化が生ずる。さきに、受精卵の胚発生を阻害せず、受精卵は原腸胚期に達するが、孵化を阻害し、受精膜に包まれた原腸胚を与える化合物としてJaspis属海綿からJaspisinを得た。今回、Jaspisinが 孵化酵素を直接阻害することを明かにした。孵化酵素はマトリックスエンドプロテイナーゼの一種であるが、このグループに属するヒトがん細胞のゲラチナーゼに対してJaspisin は阻害活性を示すが、アスタシン型エンドプロテイナーゼの一種メダカの孵化酵素、サーモライシン、パパイン、トリプシン、キモトリプシンなどのプロテイナーゼ活性に全く影響を与えなかった。このような阻害特異性の高い化合物はこれまでに知られておらず、本化合物ががんと初期発生の研究に有用であることが明らかになった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] S.Ohta,E.Ohta & S.Ikegami: "Novel norsesterterpenes,which inhibit gastrulation Z the starfish embryo,hom the marine sponge,Rhopaloiedes SP." Tetrahedron. 54. 15607-15612 (1998)
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[Publications] H.Hioki,M.Hamano,Y.Mimura M.Kodama,S.Ohta.M.Imai Y S.Ikegami: "Revised structure,synlhesis and aeoalute configurtaion of hippospongic acid A" Tetrahedron Letters. 39. 7745-7746 (1998)
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[Publications] T.Mohri,S.Miyazaki,H.Shirakawa & S.Ikegami: "Sperm-induced local [Ca^<2+>]rise separated from the Ca^<2+> wave in sea urchin eggs in the snesence of gamete finsim inhibitor jaspisin" Development. 125. 293-300 (1998)
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[Publications] K.H.Kato,K.Takemoto,E.Kato,K.Miyazaki,H.Kobayashi & S.Ikegami: "Inhibition of sea urchin dertilization by jaspisin,a specific inhibiter of matrix metalloeneloproteinase" Development,Growth & Differentiation. 40. 221-230 (1998)