1998 Fiscal Year Annual Research Report
林業労働の参入・退出のコウホート分析-新規参入者の定着条件と退職要因-
Project/Area Number |
09460067
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永田 信 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (20164436)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立花 敏 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (50282695)
大橋 邦夫 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (40203898)
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Keywords | 林業作業者 / 育林作業者 / 森林組合 / 新規参入者 / 山村社会 / 供給構造 / コウホート分析 |
Research Abstract |
まず1960〜90年の「国勢調査」職業別就業者数のデータから林業作業者の推移を検討し、1970年以降のデータによりコウホート分析を行った。林業作業者は1960〜70年に伐出と製炭・製薪作業者が急減していた。一方、育林作業者数は安定的に推移したが1985〜90年に顕著な減少が見られた。育林作業者では高齢のリタイアを60歳未満の幅広い層の参入が補い顕著な減少はなかったが、90年には参入が殆ど見られなくなった。育林作業の中心世代であった1930年生まれコウホートのリタイアが始まり、加えて1925年生まれコウホートも大量にリタイアした為である。将来的に育林・伐出作業者の減少が続けば、約10万人(90年)の林業作業者は2050年には約1万人にまで減少する可能性がある。 また、岩泉町森林組合・葛巻町森林組合(岩手県)、仙北東森林組合(秋田県)、白鳥町森林組合(岐阜県)、信楽町森林組合(滋賀県)等において、森林組合の林業労働対策への考え方や定着への取り組み、新規参入者の参入動機や労働条件、労務への感想、地域での生活について聞き取りを行った。東北地方では現在も山村社会が林業労働の供給源として機能しており、従来の半農型労働力が中核的存在であった。だが、岩手県では就労先が多様化して若年参入が殆ど見られず、近い将来に供給構造に変化が起こると考えられる。秋田県では米作農業を要因に家及び水田を継承する意識が強く、森林組合でも高校新卒者を中心に参入があり山村社会が継続的安定的な供給源となっていた。岐阜県では、大都市圏とのアクセスが比較的良い事から、都市部の人間がその自然要件に憧れて新規参入し(Iターン)林業労働の中心的存在になりつつあった。だが労働条件や人件費の上昇等が定着への問題として顕在化しつつある。また滋賀県では、林業の地位が低い事から林業労働の確保が難しく九州や四国からの季節労働へ依存していた。
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