1999 Fiscal Year Annual Research Report
位置特異的置換セルロース誘導体の化学合成-セルロース化学の基礎的問題の解決-
Project/Area Number |
09460076
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
中坪 文明 京都大学, 大学院・農学研究科, 教授 (10027170)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上高原 浩 京都大学, 大学院・農学研究科, 助手 (10293911)
湊 和也 京都大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (10026601)
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Keywords | セルロース / 位置特異的置換セルロース / 3-O-benzyl cellulose / 3,6-di-O-benzyl cellulose / カルボキシメチル化 / 水素結合 / セルロース溶剤 / 位置特異的メチル化セルロース |
Research Abstract |
本年は研究期間の最終年である。本年度の研究成果および過去2年間の成果をまとめると以下のようになる。化学合成セルロース誘導体すなわち、3-O-benzyl celluloseおよび3,6-di-O-benzyl celluloseは位置特異的置換セルロース誘導体の調製のための出発物として有用であると考えられ、それらの水酸基の反応性を検討した。2位の水酸基については、S_N2反応及びカルボキシルメチル(CM)化について検討した。その結果、3位のbenzyl基の立体障害により2位の水酸基の反応性は極めて低いことが判明した。すなわち、現段階ではスルホン酸エステル化そしてCM化が進行する反応条件は見出されてはいない。これは、これらの反応が低分子モデル化合物では容易に進行することを考慮すると予想外のことであり、ポリマー効果の結果であると考えるのが妥当であろう。この原因は立体障害が一つ、その他電子効果が考えられる。すなわち、benzyl化により分子内水素結合がより強固になり遊離の水酸基のイオン化が抑えられるためと考えられる。これは、位置特異的メチル化セルロース誘導体の調製においても観察された結果である。今後その点が解明されると、特に後者の決定的な証明が得られるとセルロースの分子内および分子間水素結合の実体が見えてくるであろうし、またその制御法も開発され、新しいセルロース溶剤の開発へと発展すると考えられる。以上のように本研究成果はセルロース分子の水素結合についての問題点の新しい局面を開いた点大きな成果であると考えている。
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