1997 Fiscal Year Annual Research Report
嗅粘膜電気刺激による嗅覚誘発電位の臨床応用に関する研究
Project/Area Number |
09470299
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
児玉 南海雄 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (40004999)
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Keywords | 誘発電位 / 嗅覚機能 / 電気刺激 / 嗅粘膜 / 術中モニタリング |
Research Abstract |
近年、脳神経外科領域においては種々の誘発電位の臨床応用がなされ、神経機能の客観的評価および術中モニタリングに利用されている。しかし、嗅覚機能に関しては、未だ客観的な評価方法がなく、術中モニタリングも行なわれていない。そこで、嗅覚機能の客観的評価法を開発して術中モニタリングに応用すべく、嗅粘膜電気刺激による嗅覚誘発電位の実験的検討を行った。なお、臭い刺激では刺激条件を一定にすることが困難であり、嗅粘膜に付着した化学物質のwash outが不可能であること等から、刺激として不適当であると考え、嗅粘膜の刺激法としては電気刺激を選択した。 まず動物実験において、観血的に露出したイヌの嗅粘膜を、刺激強度20V以上で刺激することにより、頭蓋内の嗅索から約40msecにピーク潜時を持つ、振幅が約200μVの陰性電位(N40)が再現性良く記録できた。このN40については、電気刺激によるartifactおよび筋電図の影響はなく、三叉神経の関与が否定され、刺激部位の特異性のあることが示された。また、嗅神経を切断することによりN40は完全に消失したことから、本反応は嗅神経を介した反応と考えられた。さらに、刺激頻度を高くするとN40の振幅が減少したことから、シナプスを介した反応であると考えられた。以上より、嗅粘膜電気刺激により嗅索から得られたN40は、嗅覚伝導路起源の誘発電位と考えられた。次に、イヌの嗅索および頭皮から同時に誘発電位の記録を試みたところ、頭皮からもピーク潜時約40msecの誘発電位が記録された。この誘発電位の振幅は嗅索由来の電位の約1/7で、N40と同様な性質を有していたことから、嗅索から記録されたN40が遠隔伝播したものと考えた。これは、臨床応用に際し非観血的な頭皮からの記録の可能性を示唆するものであった。
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