1998 Fiscal Year Annual Research Report
嗅粘膜電気刺激による嗅覚誘発電位の臨床応用に関する研究
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09470299
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
児玉 南海雄 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (40004999)
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Keywords | 誘発電位 / 嗅覚機能 / 電気刺激 / 嗅粘膜 / 術中モニタリング |
Research Abstract |
前頭蓋窩近傍の手術に際しては、慎重な操作において嗅覚伝導路の形態を温存せしめても、術後に嗅覚障害を呈してしまうことが少なからず経験される。そこで、我々は嗅覚機能の客観的評価および術中モニタリングへの応用を目的として、嗅粘膜電気刺激による嗅覚誘発電位の記録が可能か否かを検討してきた。すでに動物実験では、イヌを用いて、嗅粘膜を電気刺激して嗅索から誘発電位の記録を試み、一相性あるいは多相性の反応波形を記録し、嗅粘膜電気刺激による嗅覚伝導路起源の誘発電位と証明した。 この動物実験の結果を基に、ヒトにおいても、嗅粘膜を電気刺激することにより、嗅索から嗅覚伝導路起源の誘発電位の記録が可能か否か検討した。全身麻酔導入後に直径0.7mmの微小ファイバースコープで経鼻腔的に嗅粘膜を観察した後、ファイバースコープのガイド下に刺激電極を嗅粘膜上に固定した。開頭手術後、露出した嗅索上から記録を試みた。対象は前頭蓋窩の手術操作により嗅覚障害を引き起こす可能性があった症例で、術前に患者本人から承諾を得て検査を実施した。 ヒト嗅粘膜電気刺激により、嗅索から一相性あるいは多相性の反応波形が記録され、ピーク潜時約27msecに認められた陰性電位は再現性良く記録された。この陰性電位N27について動物実験と同様の検討を加えたところ(1)筋電図の関与は否定され、(2)嗅粘膜以外の鼻腔粘膜刺激では反応波形が描出されないことから、刺激部位の特異性のあることが証明され、(3)刺激のcurrent spreadによるものではなく、(4)シナプスを介した反応であると考えられた。以上の結果より、ヒト嗅粘膜電気刺激により、嗅索から安定して得られたN27を含む誘発電位は、動物実験で得られた誘発電位と基本的には同形であり、同様の性質を示したことから、嗅覚伝導路起源の誘発電位と考えられた。
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