Research Abstract |
富山県神通川流域カドミウム(Cd)汚染地域住民における尿細管障害の有病数並びに11年間の発生割合を検討した.富山市(5;G,J,K),婦中町(13;B,C,H,I),大沢野町(4;E,F,L),八尾町(2;D)から24集落を選び,婦中町の2集落(A),富山市の3集落(M)を対照とした.A〜G地区に居住する1918(大正7)から1927(昭和2)年生まれの男女全員(男156人,女174人),H〜M地区に居住する1914(大正3)から1929(昭和4)年生まれの男女全員(男159人,女198人)を対象とした.A〜G地区では1983年と1994年(女性;初回調査時年齢55〜65歳),1985年と1996年(男性;同57〜67歳)の,H〜M地区では1984年と1995年(女性;同54〜70歳),1986年と1997年(男性;同56〜72歳)の各2回(初回調査,追跡調査),尿検査を主体とする健康調査を実施した.2回の調査ともに参加し,かつ尿pH<5.50,糖尿病,腎臓病有現病歴者などを除くA〜G地区女83人,男80人,H〜M地区女114人,男79人を解析対象とした.尿細管障害(Renal tubular dysfunction,RTD)の判定は尿β2-ミクログロブリン≧1mg/gCrかつグルコース≧150mg/gCrとした.対照A地区では男女ともにRTDは1例もみられなかった.Cd汚染地区(B〜G地区)の有病割合は23〜44%と有意に高く,また地区間差が顕著であった.新発生数(割合)は女9人(19%),男5人(11%)であった.汚染地区H〜L地区のRTD有病割合は18〜49%であり,女では有意に高率であった.新発生数(割合)は女25人(33%),男7人(13%)であった.RTDは汚染地区に特異的に多発しており,ひとたび罹患すると回復がみられず慢性に経過した.新発生は男女ともに10%以上の割合でみられ,今後も新たな発生が予想された.新発生は復元事業の終了した地区においてもみられ,土壌改良事業との関連はみられなかった.
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