1998 Fiscal Year Annual Research Report
高等動物ペルオキシソーム形成因子群のクローニングと機能解析
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09480164
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Research Institution | Himeji Institute of Technology |
Principal Investigator |
大隅 隆 姫路工業大学, 理学部, 教授 (50111787)
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Keywords | ペルオキシソーム / 温度感受性変異 / ペルオキシソーム形成因子 / ペルオキシソーム欠損症 / Zellweger症候群 / Infantlle Refsum病 |
Research Abstract |
ペルオキシソームは酵母からヒトに至るまで、真核生物一般に広く存在するオルガネラであり、脂肪酸の分解、種々の酸化反応など、多くの重要な代謝機能を担っている。ヒトには遺伝的ペルオキシソーム欠損症が知られているが、この遺伝疾患は少なくとも11種の相補性群に分類される。我々は前年度に軽症型ペルオキシソーム欠損症が温度感受性変異によることを見いだした。この型の変異がなぜ軽症病型をもたらすのかを明らかにするため、ヒトの温度感受性PEX2遺伝子をPEX2欠損CHO細胞に導入し、得られたトランスフォーマントのペルオキシソーム機能を調べた。この細胞では、ペルオキシソームマトリックスタンパク質のカタラーゼは、39℃ではサイトゾルに一様に分布するが、33℃ではペルオキシソーム膜タンパク質のPMP70と一致して点状に局在するという、軽症型患者と同様の温度感受性を示した。しかしペルオキシソームの重要な機能である脂肪酸β酸化系を担うアシル-CoAオキシダーゼとチオラーゼは、39℃でもPMP70と一致して点状に局在していた。またこの細胞では、39℃における極長鎖脂肪酸酸化活性もほぼ正常であった。このことは、軽症型患者においては、ペルオキシソームが部分的に活性をもっていることを示唆している。またカタラーゼは他のペルオキシソームタンパク質に比べて、ペルオキシソームに輸送されにくいと考えられた。なお、タンパク質合成阻害剤であるシクロヘキシミドを添加した条件でこの細胞を39℃から33℃にシフトすると、カタラーゼの点状分布が回復した。このことは、すでに存在している不完全なペルオキシソームにカタラーゼが輸送されたことを示しており、ペルオキシソームの形成機構を考える上で重要な知見といえる。 ペルオキシソーム欠損細胞には、PMP70を含み、ペルオキシソームマトリックスタンパク質を含まない膜構造(ゴースト)が存在している。相補遺伝子の導入による回復過程で、ゴーストにペルオキシソームタンパク質の輸送が起こるのかどうかを調べるため、ペルオキシソーム輸送シグナルレセプターのPEX5を欠損したCHO細胞に、正常PEX5タンパク質とペルオキシソーム移行型GFPタンパク質とを同時にマイクロインジェクションした。その結果、このGFPはPEX5タンパク質に依存してPMP70と同様の分布を示すようになること、その過程はシクロへキシミドによって阻害されないことが明らかになった。このことは前段の結果と同じく、すでに存在するゴーストまたはペルオキシソームにタンパク質が新たに輸送されることによってペルオキシソームが形成されるという仮説を支持している。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Tamura,Shigehiko: "Human PEX1 cloned by functional complementation on a CHO cell mutants is responsible for peroxisome-deficient Zellweger syndrome of complementation group I" Proceedings of the National Academy of Science,USA. 95. 4350-4355 (1998)
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[Publications] Imamura,Atsushi: "Temperature-sensitive phenotypes of peroxisome assembly processes represent the milder forms of human peroxisome biogenesis disorders" American Journal of Human Genetics. 62. 1539-1543 (1998)
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[Publications] Yamasaki,Masatoshi: "Variant forms of green and blue fluorescent proteins adapted for the use in mammalian cells" Bioimages. 6. 1-7 (1998)
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[Publications] Okumoto,Kanji: "PEX12,the pathogenic gene of group III zellweger syndrome:cDNA cloning by functional complementation on a CHO cell mutant,patient analysis,and characterization of pex12p" Molecular and Cellular Biology. 18. 4324-4336 (1998)
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[Publications] Imamura,Atsushi: "Temperature-sensitive mutation in PEX1 moderates the phenotypes of peroxisome deficiency disorders in the highest-incidence group" Human Molecular Genetics. 7. 2089-2094 (1998)
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[Publications] Shimozawa,Nobuyuki: "Genetic basis of peroxisome assembly mutants of humans,CHO cells and yeast:identification of a new complementation group of peroxisome biogenesis disorders,absent from peroxisomal membrane ghosts" American Journal of Human Genetics. 63. 1898-1903 (1998)