1997 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子銃を用いた癌細胞死誘導遺伝子・抗腫瘍免疫誘導遺伝子導入による癌の遺伝子治療
Project/Area Number |
09557094
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
砂村 眞琴 東北大学, 医学部・附属病院, 助手 (10201584)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江川 新一 東北大学, 医学部・附属病院, 助手 (00270679)
濱田 洋文 癌研究会, 癌化学療法センター, 部長
佐藤 正明 東北大学, 工学部, 教授 (30111371)
小針 雅男 東北大学, 医学部, 講師 (30170369)
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Keywords | 遺伝子統 / 遺伝子治療 / IL-12 / 血管新生 / 抗腫瘍療法 |
Research Abstract |
Folkmanらが提唱する"Tumor Dormancy"の理論によれば、転移巣がある大きさ以上に増殖するためには腫瘍血管網の形成が必要不可欠であり、腫瘍血管新生過程を制御することが癌に対する重要な戦略となることが示されている。近年、細胞性免疫応答を賦活するTh1の誘導にはIL-12が中心的役割を果たすことが明らかとされた。また、IL-12は強力な腫瘍血管新生抑制作用を誘導することも報告されている。本年度は、IL-12の腫瘍血管新生抑制作用を検討し、遺伝子銃を用いたIL-12遺伝子導入による抗腫瘍療法の基礎的検討を行った。 (方法)レトロウイルスベクターを用い、IL-12のp35遺伝子とp40遺伝子とPK-1に導入し、IL-12産生株(PK/12)を作製した。1)PK-1およびPK/12を細胞培養し、細胞増殖速度を比較した。2)SCIDマウスを抗アシアロGM1抗体で処理し、NK細胞を除いた。3)このマウスの背部にPK-1またはPK/12を移植し各々の増殖を検討した。4)さらに抗マウスIL-12抗体でSCIDマウスを処理した後、PK/12を背部に移植して腫瘍増殖を検討した。5)SCIDマウス背部にskinfold chamber(透明窓)を作製し、wild typeの膵癌細胞(PK-1)とIL-12産生膵癌細胞(PK/12)を各々移植した。腫瘍血管新生過程を経時的に観察比較した。 (結果)in vitroにおける細胞増殖では、PK/12はPK-1とほぼ同様な増殖パターンをとった。in vivoにおいてはPK-1は腫瘤を形成したが、PK/12では腫瘍の形成は有意に抑制された。抗IL-12抗体で処理したマウスにPK/12を移植すると、増殖の開始が遅れたもの腫瘤を形成した。skinfold chamber内に移植されたPK/12では、PK-1で観察された血管新生網がほとんど形成されなかった。 (考察)IL-12は免疫反応におけるTh1-Th2バランスをTh1に誘導して、NK細胞を中心とした非特異的な免疫反応を刺激すると伴に、癌抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を誘導することが知られている。T細胞、B細胞機能の欠損した免疫不全マウスであるSCIDマウスを使用しているため、抗腫瘍効果におけるCTLの関与は否定できる。さらに抗アシアロGM1抗体を用いてNK細胞も除外した。このような条件下においても、IL-12の強力な抗腫瘍効果の存在が証明された。この原因としてskinfold chamberで確認したように、血管新生抑制作用の関与が強く示唆された。IL-12を用いた遺伝子治療を臨床応用するため研究を進めているが、同時に遺伝子銃の遺伝子導入効率に関しても研究を開始した。
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