1998 Fiscal Year Annual Research Report
冠動脈バイパス術語の慢性期グラフト内膜肥厚の遺伝子治療に関する研究
Project/Area Number |
09557108
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
広瀬 一 岐阜大学, 医学部, 教授 (20101272)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩田 尚 岐阜大学, 医学部, 助手 (90303495)
安田 博之 岐阜大学, 医学部附属病院, 助手 (50293577)
森 義雄 岐阜大学, 医学部附属病院, 講師 (40220032)
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Keywords | 血管内皮細胞 / 冠動脈バイパス術 / C-type natriuretic peptide / CD34血管内皮前駆細胞 |
Research Abstract |
本研究の目的は冠動脈バイパス術後の静脈グラフトに生じる内膜肥厚を制御することにより,慢性期のグラフト狭窄あるいは閉塞を回避することである.血管内皮細胞の増殖がグラフト内膜の肥厚に大きく関与しており,その機序の解析が必要である.これまで新生血管内皮の内皮細胞は成体では既存する血管内皮細胞にのみ由来すると考えられてきた,しかしながら末梢血中の単核細胞中のわずかに認められるCD34陽性細胞が血管内皮前駆細胞として成体においても血管内皮細胞へ分化する可能性が示唆されており,我々はこの細胞を分離し培養することにより内膜肥厚の機序を解析し,有効な遺伝子治療を考察することとした. 1. ヒト末梢血中よりリンパ球比重分離法で単核球成分を分離した後,造血幹細胞と血管内皮前駆細胞に共通の表面抗原であるCD34に対する抗体をコーティングしたビーズを用いて,磁気ビーズ法によりCD34陽性血管内皮前駆細胞を分離した.分離した細胞を血管内皮細胞増殖因子を含む液体培地中で培養した結果,形態学的に内皮細胞への分化が確認された. 2. 一方,最近は種々のサイトカインが内皮細胞の増殖に関与するとされており,我々は特に利尿ペプチドファミリーの一つであるC-type natriuretic peptideに注目した.このペプチドは内膜の増殖に対し抑制的に働いていると考えられており,冠動脈バイパス術後のその動態は非常に重要であると考えられた.当科において体外循環を用いて施行した冠動脈バイパス術症例では,術前CNP値は全例で測定感度以下であったのに対し,体外循環中および術後CNP値は全例で上昇を認めた.CNPはホメオスタシスの維持にも関与しているためこの結果は慎重に考察する必要があると思われるが,臨床検体でCNPの測定を継続し,CNP以外のアドレノメデュリンやPAMPなどのサイトカインについても検討を行う予定である. 今後は血管内皮前駆細胞から内皮細胞への分化を分子生物学的手法を用いて確認した後,CNPをはじめとした種々のサイトカインの前駆細胞とその分化に対する影響を検討し,静脈グラフトの内膜肥厚に対する遺伝子治療のストラテジー獲得する.
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