1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610011
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
別所 良美 名古屋市立大学, 人文社会学部, 助教授 (10219149)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 正良 金沢大学, 文学部, 助教授 (20201543)
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Keywords | 意味の全体論 / ホーリズム / 共同体 |
Research Abstract |
平成10年度においては以下の研究を行なった。 前年度における「意味の全体論」に関する言語哲学的な基礎研究をふまえて、今年度は全体論の社会哲学的な研究に重点を置いた。社会的な共同性を支える「意味」、すなわち社会的規範に関しても〈全体論〉や〈分子論〉や〈原子論〉といった立場が考えられるが、それらは「共同体主義」や「自由主義」や「リバタニアニズム」として社会哲学の分野で論じられている。それらの議論をふまえて、社会哲学における〈意味の全体論〉としての「共同体物語」を問題にし、そこにはらまれる理性の暴力性の問題に焦点を当てて研究を進めた。W・ベンヤミンやH・アレントの暴力論を手がかりにし、共同体物語の不可避性を認めた上で、物語の内在的変容の可能性を探った(別所論文)。 更に、名古屋市立大学に関連研究者を招いて研究会を開き問題の深化を図った。すなわち中岡成文氏(大阪大学)の講演「現場性・当事者性とロゴス-臨床哲学の試み」では、超越論的なロゴスによる〈意味〉の導出という伝統的な哲学志向を克服し、社会の現場にコミットしながら〈意味〉の生成のプロセスを哲学するという「臨床哲学」の試みが紹介され、議論された。つぎに石井潔氏(静岡大学)の講演「公的領域と私的領域」では、社会的な意味生成の問題を「公的-私的」という二元論的図式の中でのみ扱うことの誤りが指摘され、議論された。意味の〈全体論〉と〈原子論〉という対立図式そのものの見直しである。
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Research Products
(1 results)