1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610228
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
西山 八重子 金城学院大学, 現代文化学部, 教授 (10164617)
|
Keywords | 居住空間論 / 民間非営利組織(NPO) / 住民参加 / 規制緩和 / 都市計画 / 市民事業組織 / 土地利用規制 / まちづくり |
Research Abstract |
本研究の目的は、居住空間問題の実態把握と都市計画法や建築基準法などの制度や法の限界を明らかにし、居住空間問題の解決を求める民間非営利組織の活動に注目することにあった。ヒアリング調査による実態調査とNPO研究会での理論検討を進め、以下の知見を得た。 (1)グローバル経済化にともなう規制緩和策は、職住近接の居住空間を破壊しつつある。具体的には、地域社会の文化的・社会的中核機能を担っていた市街地商店街の衰退があげられる。掛川市のように、「生涯学習土地条例」を定め、住民参加型の開発や土地利用計画を策定した先進的自治体ですら、規制緩和による資本進出と無秩序な土地利用の流れを押しとどめることができていない。郊外地や農地における都市計画の規制力の弱さが、歴史的市街地とそれを支えてきた地域社会の衰退を招いている。 (2)わが国の民間非営利組織(NPO)の特徴と外国との比較。まちづくりプランナーによる組織(神戸市)、老人給食サービス組織(世田谷区)などの調査、生活クラブ生協を基盤にしたワーカーズ・コレクティヴなどの研究から、わが国のNPO組織は、行政からの補助金を得るとともに、行政補完組織としての性格を強くしていることが問題であった。これは、補助金を受ける代わりに、活動内容や組織化に規制がかかるためである。NPOが本来もっていた、自由で柔軟な発想による活動、時には行政に対抗的となるべき活動が失われている。これに対し、ロンドンでみられたまちづくりNPOは、行政と民間企業から自立した組織とするために非常な努力をしていた。例えば、補助金は行政からだけでなく、複数の財団や民間団体から得ることにより、特定の団体に従属的になることを避けている。さらに活動の中立性を維持するために、さまざまな分野の専門家がボランティアとして支援し、理事会を構成したり、助言などを行っている。つまり、NPOを市民による第3の勢力として、社会的に認知する制度的保障があるのである。こうした社会的・文化的相違をさらに明らかにし、わが国のNPOが真に市民組織として力をつけていく条件を明らかにすることが今後の課題でもある。
|