1997 Fiscal Year Annual Research Report
家訓・遺言算よりみる民衆の宗教・倫理観-近代化の精神的基礎解明のために-
Project/Area Number |
09610351
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University of Economics |
Principal Investigator |
有元 正雄 広島経済大学, 経済学部, 教授 (60079267)
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Keywords | 家訓・遺言類 / 複合的信仰地帯 / 呪術の園Zaubergarten / 流行神とスタレ神 / 文化改革の進行 / 民衆の合理化 |
Research Abstract |
1.平成9年度は主として関東とその周辺地域の史料収集にあたった。即ち、関東に静岡・山梨長野を加えた1都9県の都・県立図書館を中心に地方史誌類から家訓・遺言・村掟・若衆規約・宗教的謁規約等の史料を集めた。2.収集史料の中心となる家訓・遺言等は合計76点に及ぶ。なお家訓・遺言類以外に民衆の宗教=進行・倫理=道徳・風俗=習慣に関する多数の史料を収集した。3.これらの史料は現在基礎的な整理が終って本格的な解析・研究にとりかかっているところである。現在までに言いうることは次の点である。 4.上記の地域における民主の宗教=進行の原型は、報告書が従来研究してきた真宗筺信地域において阿弥陀如来一仏への単神崇拝的性格の強いのに対し、仏教・神道・修験道・各種多様の民間信仰等の雑多な諸宗教に関係し、極めて複合的な信仰地幣といえる。5.加えて真宗の人間精神の永遠の安住(極楽往生)を求めるのに対し、現世利益を求める加持祈祷的性格が強い。これはM.Weberの言う「呪術の園(Zaubergarten)」そのものである。そこに諸神仏の霊験を求めた選択が生まれる(流行神とスタレ神)。6.これらの諸宗教は民衆に戒律な いし倫理的要請をほとんど課さない。徳川中後期以後に報徳学や性理学などの各種文化改革が進行するが、原型があまりにも呪術的であるために、民衆の合理化は十分達成されていないように思われる。
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