1998 Fiscal Year Annual Research Report
家訓・遺言等よりみる民衆の宗教・倫理観-近代化の精神的基礎解明のために-
Project/Area Number |
09610351
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Research Institution | Hiroshima University of Economics |
Principal Investigator |
有元 正雄 広島経済大学, 経済学部, 教授 (60079267)
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Keywords | 家訓・遺言類 / 複合的信仰地帯 / 天理・黒住・金光教 / 儒教教育 / 生活態度の合理化 |
Research Abstract |
1. 平成10年度は近畿の2府5県に加え、愛知・岐阜・岡山・鳥取・島根・香川・徳島・山口の2府13県の府県立図書館等で史料収集にあたった。 2. 収集史料の中心となる家訓・遺言等の他に,民衆の宗教・信仰、倫理・道徳、風俗・習慣に関する多数の史料を収集した。 3. これらの史料は現在基礎的な整理が終って本格的な解析・研究にとりかかっているところである。現在までに言いうることは次の点である。 4. 家訓・遺言等の内容として注目すべき点は、東日本に18世紀中頃から多数みられる「村役の忌避」(村役人につくことを避ける傾向)を記したものが少ないこと。これは所謂「関東農村の荒廃」に対し、この地帯における村落の状況の相対的安定のためと思われる。 5. 関東と同様複合的信仰地帯といえるが、修験道寺院が少ない。これが呪術に対する消極的態度=生活の合理的態度を生み、天理・金光・黒住教の近代的宗教を生み、後年の大教団に育てた基盤と思われる。 6. また儒教の影響が強く、村落上層者への儒教教育→その生活態度の下層者への影響・浸透によって民衆の生活態度の合理化が一定度の進展をみせたと思われる。
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