1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610454
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
磯部 彰 東北大学, 東北アジア研究センター, 教授 (90143841)
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Keywords | 明州刊本 / 袁氏倣宋本 / 秀州州学本 / 二川両浙大字本五臣注本 / 広都県 / 陳八郎刊五臣注本 / 鐘家刊五臣注本 / 和漢朗詠集 |
Research Abstract |
朝鮮本六臣注文選の版本は、斯波六郎氏の指摘する明州刊本及び袁氏倣宋本の優点を兼ね備えつつも、両版とは一致しない。恐らく、李善単注本と五臣単注本の原形を多く留める元祐九年刊の秀州州学本に極めて近い版本、或は、同一の版本を用いて覆刻本として刊行された可能性が浮かびあがってきた。朝鮮本六臣注文選が秀州州学本のそのもの、或はその子供とすれば、明州刊本及び袁氏倣宋本の底本たる広都県裴氏刊本は、秀州州学本といかなる関係があったのであろうか。朝鮮本五臣注文選の後序に「二川両浙」で大字本五臣単注本があったとされるが、その二川とは四川省双流県、つまり広都県を示すらしい。この地で北宋中期に五臣単注本が刊行されたことは、当時、まだ李善単注本と五臣単注本の合刻本、つまり六臣注文選がなかったことを暗示する。北宋中期元祐九年刊に秀州州学で六臣注本を出して評判を取ったことから、遅れて西川の広都県で商業出版の六臣注本裴氏刊本が出る一方、明州でも秀州州学本に拠って重複部分を圧縮して六臣注本を出したのではないか。従って、朝鮮本六臣注文選から見ると、兄弟か甥姪の関係になろう。同時に、西川の広都県刊本は五代以来の系譜を継ぐのではないと言える。 朝鮮本五臣注文選と宋版五臣単注本との関係は、現在検討中である。南宋版本には、建陽の陳八郎刊本と杭州の鍾家刊本とがある。朝鮮本の場合、北宋中期の天聖四年孟氏刻本の流を汲むと見られるが、にわかには断定しがたい。平安時代の三条本等との校勘を通して、系統立てをする予定である。校勘材料として、『和漢朗詠集』に文選が引かれていること、別系統の『古詩紀』・『漢魏詩乗』があり、さらに『歴代三十四家文集』が発見されたので、宋版の乏しい別集の補いとしてこれらの資料を用いて、朝鮮本五臣注文選の性格分析を行なう予定である。
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