1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610493
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
遠藤 健一 東北学院大学, 文学部, 教授 (20118326)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 英一 東北学院大学, 文学部, 教授 (40106745)
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Keywords | 近代小説 / 語り / 内的焦点化 / 視点 / 作中人物に反映する物語り状況 / 旅行記 |
Research Abstract |
近代小説(novel)の語り(narration)の達成を,いわゆる「内的焦点化/視点」(internal focalization/point of view)あるいは「作中人物に反映する物語り状況」(figural narrative situation)に求めることに異論はない〔Lubbock(1921);Stanzel(1985);Lodge(1990);Fludernik(1996)など〕.しかし,その淵源と生成のプロセスについては必ずしも意見の一致を見ているわけではない.本研究においては,この問題を中心課題の一つと受け止めている.この問題について現在提案できることは,次の3点である. 1「内的焦点化/視点」と呼ぼうと「作中人物に反映する物語り状況」と呼ぼうと,この語りの特徴は,物語内容(story)の物語言説(discourse)への溶融,物語内容の語りの現在への召喚という構造を有している〔遠藤(1996)〕. 2この構造と共通する構造は,実在旅行記に見いだされる一方,空想旅行記のあるものでは意図的に前景化さえされている.具体的には,等質物語世界的語り(homodiegetic narration)において,作中人物の〈わたし〉(character-I)によって語り手の〈わたし〉(nnarrator-I)が占拠されるという現象が,とりわけ空想旅行記の一部に顕著に見られるということである.3空想旅行記といわず現実旅行記といわず,いわゆる旅行記の語りに,近代小説の語りの達成のプロトタイプを見いだすことが可能なのではないか.3の特定については,旅行記のナラトロジーとも言える旅行記一般の語りの分析を待たなければならないにしても.
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