1998 Fiscal Year Annual Research Report
現代型紛争における訴訟機能の変化と訴訟の非訟化の限界
Project/Area Number |
09620039
|
Research Institution | Doshinsha University |
Principal Investigator |
上北 武男 同志社大学, 法学部, 教授 (60066264)
|
Keywords | 現代型紛争 / 訴訟の非訟化 / 争点整理 / 進行協議期日 / 和解志向型の紛争解決 / 判決志向型の紛争解決 |
Research Abstract |
現代型紛争において審理のあり方と紛争解決の方策について研究を進めた。現代型紛争では争点が多岐にわたりまた、証拠調べの手続にも多大の時間と費用を要する。また紛争解決の方策についても、たんに裁判所の判断を判決の形式で示すだけでは不十分である。このような問題意識から、争点および証拠の整理手続進行協議期日のあり方を検討した。争点・証拠の整理手続は当事者・裁判所の間で争点を確認し、その争点に限定して集中的な証拠調べを行なうことを目的とする。ただ、ここでの証拠調べは人延が中心となる。訴訟代理人として実務にたずさわる弁護士の経験でも、文書については、訴状に添付した書類、あるいは準備書面に引用した文書の写しなどから、その内容を知ることができるので、特別に証拠調べを集中的に行う必要はないという。結局、公害訴訟などの多数当事者訴訟において取り調べなければならない証人が多数いるとき、争点および証拠の整理手続が効用を発揮する。 他方、医療過程訴訟では、争点が手術等の過程と後遺症との因果関係の存否であれば、専門家の鑑定の必要が認められるが、それとは別に、患者の状況を裁判官自ら把握してほしい(損害額の認定にプラスになる)。との原告側の意向により、裁判外における進行協議期日において、裁判官が更質的な検証を行う例も報告されている(便宜的な証拠調べ=非訟化の流れ)。しかも、このような内容をもつ進行協議期日も、実務では時間と費用の節減のため、検証にかえてこれを是認する傾向にある。 紛争解決の方策については、これまで現代型訴訟の多くで「和解」が選択されていた。しかしながら、新民事訴訟法のもとでは定期金賠償の判決およびその判決確定後の変更、あるいは損害額の認定について証明・負担を軽減する(あるいは心証孝を低くする)などの方法により、判決による紛争解決への志向が強くなりつつある。和解志向型の紛争解決から判決志向型への紛争解決への変化が認められる。
|