1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09640207
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
山田 直記 福岡大学, 理学部, 教授 (50030789)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒木場 正城 福岡大学, 理学部, 助手 (60291837)
石井 克幸 神戸商船大学, 商船学部, 助教授 (40232227)
|
Keywords | 相分離 / 粘性解 / 障害物問題 |
Research Abstract |
黒木場は,江口タイプ方程式系の初期値境界値問題を取り扱い,解の存在を証明した。 この方程式系は,ある合金の中でおこる原子配列の規則-不規則変態と組成の相分離の相転移現象を記述する方程式系で,従来多くの研究者により取り扱われてきたCahn-Hilliard方程式が2階偏微分方程式であるのに対し,4階偏微分方程式で記述されている点が大きく異なっている。この問題を関数解析的に取り扱うために,方程式系を高階ソボレフ空間の枠組みで定式化し,方程式の物理的意味を深く考察することで保存量を発見した。この保存量を用いてリアプノフ関数を構成し,エネルギー法と組み合わせることによりアプリオリ評価を巧妙に導いて,解の存在を証明した。 山田は障害物問題とL^∞-ラプラス作用素の固有値問題との類似性に着目して具体的な方程式についていくつかの例を計算し,統一的な結果を得るように研究を進めている。 L^∞-ラプラス作用素は,形式的にはトラプラス作用素においてp→∞の極限操作で得られるが,数学的に厳密な取り扱いは近年,粘性解の概念を用いて成功した。その固有値問題は,方程式の形が障害物問題と類似していること,固有関数が領域を二つの部分に分けるが,その様子が障害物問題の解が領域を接触領域と非接触領域に分割する様子と類似していることなど,著しい類似が認められる。障害物問題の粘性解は非接触領域で方程式をほとんど至るところ満たすだけでなく,接触領域との境界における滑らかさも規定している。このことに注目すると,具体的な関数について固有関数との関係が比較的簡単に調べられることを利用して,興味深い具体例を個々にいくつか検討した。
|