Research Abstract |
本研究は,人が抱く感情の強さと種類を,その人の脳波と表情の特徴によって評価する手法を提案することを目的としている.脳波については、昨年度、事象関連電位の測定を行った。平成10年度は視点を変え、有向コヒーレンス解析により脳の活動部位を求める手法について検討した.表情については,表情の動的な動きを扱えるニューラルネット(以下,NNと表す)の構築を進めた. 1. 脳波解析 感情の違いにより,脳の活動部位が異なる可能性がある.先行研究を参考に,複数の部位で測定される脳波を多次元自己回帰モデルでモデル化し,このモデルについて有向コヒーレンス(ある部位の信号の大きさの内,他の部位から伝達される信号の割合を周波数毎に表したもの)を求め,これより,脳の活動部位を推定することを試みた.先行研究と同様に,音楽を傾聴した被験者の脳波を解析したところ,曲調により,活動部位に違いが生じた.ある被験者については,曲調毎の活動部位に再現性が見られた.しかし,同一の被験者でも再現性が見られない場合,あるいは,同じ曲調でも,被験者により活動部位が大きく異なる場合もあった.今後,実験条件を整え,被験者数の増加を図る予定.また,特定の感情を想起させた状態での実験などを行う予定. 2. 表情認識 面白い・楽しいという感情を対象に,その感情の発生と,その強さを認識するためのNNの構築を進めた.このNNは,表情の動的な変化を扱うために,昨年度の構築した一般的なNNを、現在の表情,現在とその直前の表情の差分,および,現在、認識している感情を入力とし,次の時刻における感情を出力とするNNに改良するものである。現在,このNNの骨格部分を構築しつつある段階である。今後,被験者による映画鑑賞実験を行い,構築したNNの特性評価を行う予定である.
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