1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09660012
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
巽 二郎 名古屋大学, 農学部, 教授 (00163486)
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Keywords | ハス / 通気組織 / 加圧作用 / 湿生植物 / 葉 |
Research Abstract |
ハス(Nelumbo nudfera)葉身における中央隆起部(central plate)を走査型電子顕微鏡で観察した.中央隆起部の表面には,気孔様の形態を有する開口構造が多数認められ,この構造の長軸方向の長さは30μm前後で,密度は1mm^2あたり55〜60個であり,葉身の気孔と比較して約2倍大きく,その分布密度は4分の1程度であることを明らかにした.開口部は気孔と良く似た形態をもち,気孔の孔辺細胞と相似の形態が認められる.この開口構造は昼間は開口しているが,夜は閉じていた. 開口構造は内部の通気組織と直接接続しており,葉柄内の通気組織を上昇したガスの外気への排出機能を担っていると推定された.さらにこの構造は開閉機能を有するが,気孔とは反対に光の当たる昼間閉じており夜間開くと考えられた.開口部の開度を調整することにより,通気組織内の圧力を能動的に調節している可能性が存在する.従来の研究結果から熱浸透作用は外気と葉の通気組織内部の温度差や湿度差に依存する物理的な加圧現象であることが知られている.通気組織内のガス圧が高い方が,拡散によって酸素が供給される根などの組織にとって有利であるが,反対に換気速度が低下する.したがってガスをリークさせることによりガス圧と換気速度が最適になるように植物が自律的に圧力を調節していると推定される.すでに報告したように,日射条件下であっても,ある成熟葉から吸収された標識ガスは隣接した一方の葉の中央隆起部から排出されるが,隣接したもう一方の葉では排出が認められなかった.これは個体を構成するすべての葉の中央隆起部の開口部が同じように開閉するのではなく,その開口度が葉によって異なっており,そのことにより植物体全体としての通気作用を調節していると想像される.この点は今後さらに検討する必要がある.
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