1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09660015
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
田中 修 甲南大学, 理学部, 教授 (90167495)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 正昭 大阪府立大学, 農学部, 教授 (30027198)
東 順一 京都大学, 農学部, 教授 (80115782)
島田 多喜子 石川県農業短期大学, 農業資源研究所, 教授 (20170946)
今井 博之 甲南大学, 理学部, 講師 (40278792)
中村 運 甲南大学, 理学部, 教授 (80068072)
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Keywords | 遺伝子導入 / イネ / 形質転換植物 / シリコンカーバイトウィスカー / ホウ酸アルミニウムウィスカー |
Research Abstract |
形質転換植物の作出は、プロトブラストを用いる方法、アグロバクテリウムを利用する方法、パーテイクルガンによる方法を中心に行われてきた。しかし、これらの方法は、適用植物種が限られていたり、高度な組織培養の技術や高価な装置が必要である。そこで、容易で安価で適用性の広い形質転換法の開発が望まれてきている。その可能性の一つが、ウィスカー構造を持つ物質を用いて、細胞内に遺伝子を導入しようとするものです。この方法で、懸濁細胞を用いた予備的な実験はなされてきたが、実際の形質転換植物がつくられたのは、トウモロコシだけであった。 本研究では、イネのカルスを用いて、シリコンカーバイトウィスカーによる世界で2番目の形質転換植物を得た(論文発表では、牧草で成功した研究者に先を越され、3番目になった)。導入体にカルスを用いて形質転換植物を得たのは、この方法では、世界で初めてである。 さらに、ウィスカー構造を持つ物質の中から、ホウ酸アルミニウムウイスカーが有効であることを見出し、これを用いて形質転換植物を世界で最初に作出した。ウイスカー法によるカルスからの遺伝子導入植物の作出では、2例目である。 このように本研究は、シリコンカーバイトウィスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカーを用いて、植物への遺伝子導入条件を検討し、比較的容易にイネの形質転換個体が得られることを実証した。特に、遺伝子導入に広く使われるアグロバクテリウムの利用が難しいイネを材料に、カルスからの形質転換が容易に行われたことは、ウイスカー構造を持つ物質を用いて、細胞内に遺伝子を導入する方法の有用性と今後の発展性を示唆するものである。それ故、本研究は、近年の学術の動向に鑑みた先駆的研究と評価される。
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[Publications] Osamu Tanaka: "Flower-inducing activity of lusine in Lemna paucicastata 6746" Plant and Cell Physiol.38(2). 124-128 (1997)
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[Publications] 田中 修: "窒素欠乏による花芽分化の誘導機構" 化学と生物. 35(2). 74-76 (1997)
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[Publications] 平井源一: "大気湿度が水稲の生長ならびに生理に及ぼす影響-暗条件の大気湿度が生長と^<13>Cの挙動からみた光合成産物の転流に及ぼす影響" 日本作物学会紀事(Jpn.J.Crop.Sci.). 67(2). 216-220 (1998)
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[Publications] 平井源一: "水稲の光合成速度が光合成産物(^<13>C)の転流に及ぼす影響" 近畿作物・育種研究. 44. 36-38 (1998)
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[Publications] 高橋亘: "アズキ(Vigna angularis)品種丹波大納言の上胚軸切片およびカルスからの植物体再分化" 日本作物学会紀事(Jpn.S.Crop Sci.). 67. 561-567 (1998)
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[Publications] Junzo Matsushita: "Production of fertile transgenic rice plants by silicon carbide whisker-mediated DNA delivery" Breeding Science. (in press). (1999)
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[Publications] 田中修: "緑のつぶやき" 青山社, 180 (1998)
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[Publications] 別府敏夫: "人・植物・環境" 全国日本学士会, 200 (1998)
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[Publications] 大原 雅: "花の自然史" 北海道大学図書刊行会, 262 (1999)