1997 Fiscal Year Annual Research Report
果樹の雌ずい中における花粉管生長制御機構に関する研究
Project/Area Number |
09660028
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岡本 五郎 岡山大学, 農学部, 教授 (30026611)
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Keywords | 果樹の結実不良 / 花粉管生長停止 / 花粉管誘導組織 |
Research Abstract |
1.ブドウ(マスカット・オブ・アレキサンドリア、カノンホール・マスカット、根域制限栽培及び一般栽培のピオ-ネ)、モモ(白鳳)、ビワ(田中)について、開花後の雌ずい中での花粉管成長を調査した結果、ブドウの4倍体品種では2倍体品種に比べて子房組織内での花粉管の生長が著しく劣った。また、ピオ-ネを根域制限栽培すると、花粉管生長はいくらか改善された。山梨で長梢せん定されたピオ-ネ樹は岡山の短梢せん定樹より花粉管生長がやや良好であった。また、モモでは花柱の基部で生長停止する花粉管が多く、ビワでは子房組織内での生長停止が顕著であった。 2.ブドウの4倍体品種と2倍体品種の花粉管生長の比較において、生長停止が起こる位置での組織形態の相違を光顕、電顕観察した結果、両者には花粉管誘導組織(Transmitting tissue)の発達に大きな差があることが判明した。すなわち、2倍体品種では花柱内の中心部によく発達しており、子房組織内でも両隔壁の接する面で4〜5層の誘導組織細胞が見られたが、4倍体品種では花柱や子房上部では2倍体品種と大差ないが、子室上部から胚珠上部に相当する位置になると誘導組織は急速に小さくなり、わずか1層しか誘導組織細胞が存在しなかった。したがって、花粉管が通過する誘導組織内の細胞間隙も極めて限られており、このことが4倍体ブドウ品種の花粉管生長停止の原因の一つではないかと考えられる。 3.誘導組織内の細胞間隙に存在する物質(細胞間隙マトリックス)が花粉管生長の栄養物質として大きな影響を及ぼしている可能性が考えられる。現在、その抽出方法の検討中であり、花柱及び子房の誘導組織を切り出し、ゆるやかな遠心分離法によって、細胞間隙マトリックスを取り出して、糖やアミノ酸、タンパク分析を行いつつある。
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