1998 Fiscal Year Annual Research Report
果樹の雌ずい中における花粉管生長制御機構に関する研究
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09660028
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岡本 五郎 岡山大学, 農学部, 教授 (30026611)
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Keywords | ブドウの結実不良 / 花粉管生長停止 / 花粉管誘導組織(PTT) / PTTマトリックス / 柱頭粘液 |
Research Abstract |
1. 昨年の研究で、4倍体ブドウ品種のピオーネと2倍体品種のマスカットでは、雌ずい中の花粉管誘導組織(pollen tube transmitting tissue)の発達に大きな差があることが判明した。今年度は、この傾向が4倍体品種と2倍体品種で一般的に見られることかどうかを確かめた。すなわち、代表的な各6品種について、結実性、花粉管生長、PTTの発達程度の関連性を調養した。その結果、4倍体品種は種子形成率が明らかに2倍体品種より低く、花柱内に伸長する花粉管が少なかった。また、例外なしに4倍体品種では子房組織内(子室上部、胚珠上部、胚珠中央部)におけるPTTの厚さ、細胞数が2倍体品種に比べて著しく少なく、また、PTT細胞間隙の充填物質の存在も希薄であることが観察された。花柱から子房組織内にかけての花粉管数の減少率も高かった。したがって、4倍体品種では子房組織内でのPTTの発達が不良であることは一般的な現象であり、花粉管の停止が多いこと、種子が形成されにくいことと関係があると考えられる。 2. 4倍体品種のピオーネの栽培条件を変えて、新梢の勢力を調節した結果、根域制限をすると花粉管生長がよくなり、子房組織内のPTTの発達もいくらか改善された。したがって、PTTの発達は4倍体品種の特性といえるが、栽培条件によっても改善の可能性があると考えられる。 3. 花柱の柱頭粘液が花粉の発芽に及ぼす影響をin vitroで検討した結果、2倍体品種の柱頭粘液は花粉の発芽率を大きく高めるが、4倍体品種の柱頭粘液はほとんど効果がなかった。したがって、PTTの充填物質(PTTマトリックス)の組成なども花粉管制御機構に重要な役割を占めていることが明らかとなった。
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