Research Abstract |
本年度は日本産のコナジラミ類の主要種について交尾に関わる配偶行動の全過程を音響と映像の同時的記録によって解析した.調査地は福岡県,佐賀県,大分県,熊本県,鹿児島県,および南西諸島の石垣島,西表島である.これらの記録は携帯用の防音箱とマイクロホン,3CCD小型ビデオカメラ,及びデジタルカメラを用いた.その結果,調査した全てのコナジラミの雄は腹部振動による種特有の交尾振動波を出し,また特定の種は同時に翅のデイスプレイによる雌への交尾刺激行動を示した.これら雌雄の交信システムは行動学的に固定した明瞭なシリーズからなり,雄の振動波がパルス音の時間的な配置と腹部振動の律動に遺伝的な特性を示すことが分かった.これらは全て申請者の手による発見である.著名なハウス園芸の害虫であるシルバ-リ-フコナジラミとその近似種のタバココナジラミについて,奇主植物のトマト,キュウリ,野生植物のキクイモ,スイカズラ,ポインセチア,ハイビスカスについて九州各県の異なる産地で交尾音を比較した結果,両種は音響信号で完全に区別できることを明らかにした.申請者が平成5年〜8年度に記録した10種に加えて,本年度は新たに9種の交尾信号を追加記録した.それらは草本性のミズナ,カタバミ,ノゲシ,ヨモギ,サトウキビ等を寄主植物とする種類と,木本性のブドウ,アコウ,アオキ,マサキ等を主な寄主とする種類である.いずれの交尾音も種特異的な特性を持っており,成虫の形態形質で判別が困難な分類学的な情報になると確信した.さらにヨモギ,クズ,ハギ,クサイチゴ,マサキ,ノゲシを寄主にする種が国内で記録されていない種類であることが分かった.これらの成果をもとに次年度はさらに多くの種類について調査し,交尾信号によるより多くの種の分類検索が蛹の映像データと対比してまとめられる可能性が出てきた.
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