1997 Fiscal Year Annual Research Report
職務遂行によるストレス状態と過労の関連性の検討-夜勤のタクシー運転手における心室不整脈の進展を対象として-
Project/Area Number |
09670428
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The Institute for Science of Labour |
Principal Investigator |
前原 直樹 財団法人労働科学研究所, 研究部・労働ストレス研究グループ, 主任研究員 (60165660)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 司 (財)労働科学研究所, 研究部・労働ストレス研究グループ, 研究員 (10260134)
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Keywords | 職務ストレス / ストレス状態 / 過労 / 睡眠不足 / 夜勤 / タクシー運転手 / 心室期外収縮 / 虚血性変化 |
Research Abstract |
中年のタクシー運転手を対象として、深夜勤務が心室性不整脈の出現にいかなる影響を及ぼしているのかを勤務日、勤務明け日、公休日の観測を通じて検討した。 事例1の場合、頻発性VPC(心室期外収縮)は全て単発性であったが、勤務日のVPC出現頻度は、勤務時間の経過と共に増す傾向が見られた。公休日の出現頻度は前日の勤務明け日よりは低下する傾向が見られた。事例2も全て単発性VPCであった。昼眠がとられなかった勤務明け日の仮眠前までのVPCの出現頻度は高値を示していた。一方、勤務明け日に早朝と昼過ぎの仮眠と夜眠をとった公休日のVPC出現は低い経過をとっていた。事例3の場合、走行距離数も長く、営業収入も通常より多かった勤務日の翌日の勤務明け日での夜眠中には2連発VPCが見られた。また、勤務明け日の夜眠後のVPC出現頻度も高値を示していた。この勤務明け日には短時間の昼眠のみで就床前の疲労感も増していた翌日の公休日の早朝起床後には4連発心室頻拍も出現していた。この運転手は心電図で虚血性変化と左室肥大が指摘されており、高血圧症および動脈硬化で薬物治療中であった。 以上の3事例の結果から、VPCの所見を有するタクシー運転手の運転業務は、VPCの出現頻度の増加を誘発すると共に、運転業務の負荷およびストレスが強い場合には深夜勤務時におけるその頻度は日中に較べ、増加する可能性が示された。また、深夜運転を含む20時間前後の運転業務のVPC出現への影響は、勤務日だけではなく、その後の勤務明け日、さらに引き続く公休日にまでも及ぶ可能性が示された。特に、勤務明け日の昼眠時間に不足がある場合には、出現頻度が増すだけではなく、虚血性変化を有する運転手の場合には時にVPCの重症度も増強する場合もありうることが明らかになった。
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