2000 Fiscal Year Annual Research Report
健常老年者における定量解析脳波・事象関連電位を用いた精神生理機能の前方視的研究
Project/Area Number |
09671001
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Research Institution | DOKKYO UNIVERSITY SCHOOL OF MEDICINE |
Principal Investigator |
中野 隆史 獨協医科大学, 医学部, 助教授 (20095037)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 正樹 獨協医科大学, 医学部, 助手 (70296143)
小杉 真一 獨協医科大学, 医学部, 助手 (30285853)
斎藤 治 獨協医科大学, 医学部, 講師 (00153792)
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Keywords | 健常老年者 / 生理的加齢 / 定量脳波 / 事象関連電位 / P300 / MMSE / 持続的注意機能検査 / 選択的注意機能検査 |
Research Abstract |
平成9年度から本研究に参加している社会的活動性が高い健常老年ボランティア75名(調査開始時69.0±3.0歳)に対して今年度も引き続き協力を依頼し4回目の調査を行った。神経生理学的検査として事象関連電位(ERP)と波形認識法による脳波定量分析を行い、神経心理学的検査としてMini Mental State Examination(MMSE)・持続的注意機能検査(CPT)・選択的注意機能検査(KN-VST)を施行した。 1.2.6年間の経過で、ERPではP300潜時の約10ミリ秒の延長がほぼ全領域で認められた。従来、P300潜時の加齢による延長は1年間に1-2ミリ秒とされているのと比べて延長の度合いが大きいことが注目された。従来の報告は異なる対象を年齢別に並べて比較したもので、本研究が同一対象を経時的に追跡したのとは方法が異なる。 2.定量脳波においては、ほぼ全領域で速波の出現率の増加、頭頂部を中心に徐波(遅いθ波)の減少、ほぼ全領域で中域α波の減少が認められた。健常老人では70歳代前半では徐波の増加・速波の減少など老年期の脳機能低下を示す所見は認められないことがわかった。 3.CPTで信号の検出感度の指標であるd'値や知覚の感度の指標であるA'値の低下群と不変・上昇群とでP300潜時の変化を比較すると、低下群ではP300潜時の有意な延長を認めたが、不変・上昇群では有意な変化を認めなかった。 4.KN-VSTにおいて特に前頭葉機能を反映するとされている視覚探索注目係数とMMSEの関係では、2.6年目におけるMMSE非満点群では満点群に比して視覚探索注目係数が異常値を示すものが多かった。 3,4の結果から、KN-VSTの異常、CPTにおけるd'値やA'値の変化をみることでより早期に脳機能低下を発見できる可能性が示唆された。 今後さらに数年間の追跡研究を行う計画であり、厳密に選んだ健常老人の70歳代後半における精神生理機能の加齢による変化について重要な結果が得られることが期待される。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] T.Nakamura,T.Kumada,T.Nakano,S.Satoh: "Prefrontal cortex will be responsible for the cognitive integration of visual features."The International Journal of Neuropsychopharmacology. 3(Suppl.1). S355 (2000)
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[Publications] 辛島敬士,斎藤治,中野隆史,朝日公彦,諏訪浩: "健常老年者における事象関連電位、定量脳波、持続的注意機能の経時的変化"獨協医学会雑誌. 27・3. 279-286 (2000)