1997 Fiscal Year Annual Research Report
神経膠細胞の分化および神経膠腫の発生増殖に関与する遺伝子の解析
Project/Area Number |
09671429
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 佐賀医科大学 |
Principal Investigator |
峯田 寿裕 佐賀医科大学, 医学部, 助手 (20264187)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福山 幸三 佐賀医科大学, 医学部, 講師 (60238516)
田渕 和雄 佐賀医科大学, 医学部, 教授 (50116480)
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Keywords | dipperential display / neuronal development / glial development |
Research Abstract |
われわれは、神経膠細胞の分化増殖に関連する遺伝子の同定方法として、Liangらによるdifferential display法を用いている。この方法は従来の方法と比較して、比較的簡単に、複数種の組織間において発現の異なる遺伝子を同定することができ、すでにいくつかの遺伝子が報告されている。また、われわれはラット脳から、阿相らの方法により、oligodendrocyteとtype-2 astrocyteの前駆細胞であるO-2A progenitor細胞を、McCarthyらの方法によりoligodendrocyteを分離培養した。このO-2A progenitor細胞とoligodendrocyteの間で発現の異なる遺伝子を、differential display法を用いて検索したところ、数種の遺伝子が得られた。その内の一種はO-2A progenitorに多く、oligodendrocyteに少なく発現しており、また全脳組織では加齢に伴い減少していた。すでにわれわれは、この遺伝子(RNB6)のアミノ酸コード領域全長を含むcDNAをクローニングしている。GenBankデータベースによるホモロジー検索では、RNB6はこれまでに報告されていない遺伝子であり、そのコードするアミノ酸配列は、VASP(vasodilator-stimulated phosphoprotein)という蛋白に類似していることを確認した。VASPはリン酸化されて、profilin(アクチンフィラメントの重合シグナルを伝達し、細胞骨格や接着斑の形成および細胞の運動を制御する蛋白)に結合することが確認されており、VASPの存在下でアクチンの重合が促進されるという報告もある。このため、RNB6も細胞骨格や細胞の運動性に関与することが推測される。またRNB6はある種の神経膠種ではその発現を欠いており、腫瘍細胞の接着性の低下や転移機構に関わっている可能性も考えられ、現在その詳細な機能を解析中であり、今後も主にこの遺伝子について解析していく予定である。平成9年度は、RNB6の発現を組織内または細胞内での分布を調べた。方法としては、(1)Northern blot、(2)抗RNB6抗体による免疫染色、を行った。(1)では、RNB6はラット新生児脳で加齢とともに発現が低下することが確認され、また正常組織では脳以外に免疫系の細胞に発現していることが確認された。(2)では、はじめに抗RNB6抗体を作製し、GST(glutathione S-transferase)cDNAとRB610 cDNAを結合したインサートを持つプラスミドベクターを大腸菌にトランスフォームし、GST-RNB6融合蛋白を産生させ、それを精製した後、ウサギに免疫し、抗RNB6抗血清を採取した。また、ペプチド合成装置を用いてRNB6のアミノ酸配列からオリゴペプチドを作製し、同様にウサギに免疫し、抗血清を採取する。得られた抗血清を用いて、正常脳組織および脳腫瘍組織・細胞を免疫染色し、RNB6蛋白の発現分布を確認したところ、正常脳においては、特に神経細胞に強く発現が認められ、神経細胞の軸索の伸長や接着に関与していることが予想された。現在は、RNB6の発現ベクターを構築して、通常RNB6が発現していない脳腫瘍細胞にトランスフェクトし、細胞の形態や性質の変化を観察しており、今後RNB6の中枢神経系での機能を更に詳細に解析していく予定である。
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[Publications] 太田昭一郎他: "Differential display法による中枢神経系細胞分化関連遺伝子の同定" 神経免疫研究. 9. 64-66 (1996)
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[Publications] Ohta,S et al: "Differential display cloning of a novel rat cDNA(RNB6)that shows high expression in the neonatal brain revealed a member of Ena/VASPfamily." Biochem.Biophysi.Res.Communicat. 237. 307-312 (1997)