1998 Fiscal Year Annual Research Report
骨軟部肉腫の増殖と薬剤抵抗性およびアポトーシスとの関係
Project/Area Number |
09671486
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
松本 圭司 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (70165885)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石澤 命仁 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (00242983)
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Keywords | 骨軟部腫瘍 / アポトーシス / 抗癌剤 / 細胞動態 / ヌードマウス / 増殖マーカー |
Research Abstract |
研究方法:当科で継代中のヒト軟部発生の悪性線維性組織球厘を60匹のヌードマウス背部皮下に移植し、第1群から第3群は抗癌剤投与群として、各種抗癌剤を腹腔内に投与した。これらの処理後、実際の腫瘍増殖を腫瘍径を測定することにより求めると同時に、各群のうち3匹ずつをそれぞれ研究第1、5、9、17、33日に、Brduおよびこれに類似のIrduを一定時間の間隔にて腹腔内投与し、作成された切片を免疫組織化学的にBrdu,Irduを染色し、Brdu陽性細胞、Irdu陽性細胞および両者が陽性の細胞をカウントし真のS期時間を算出した。同時にPCNA,Ki-67の各種増殖パラメーターを染色し、カウントした。また、in situニックトランスレーションを用いてネクローシスとアポトーシス細胞の全体の細胞数に対する比率を求めた。 研究結果:3種類の薬剤はコントロール群と比較して、全て体積から見た腫瘍増殖の抑制効果が得られた。抑制効果の順序はビンクリスチン、アドリアマイシン、シスプラチンであり、体積より見た腫瘍増殖効果は、上記マーカーのうち、実験第1日目に得られたtotal cell cycle time (BrdU labeling index およびS期時間より算出可能)と逆相関する事が判明した。これにより、臨床的に抗癌剤感受性が早期に予想出来る可能性が示唆された。その他の増殖マーカーである Brdu labeling index,真のS期時間,PCNA labeling index,Ki-67 labeling indexは抗癌剤投与後に変化が見られるが、腫瘍体積より見た抑制効果とは必ずしも一致しないことがわかった。 また、増殖抑制の見られた腫瘍では、アポトーシス、ネクローシスの両者が観察されたが、特に前者は投与後9日目前後にその最高値を示し、またその値は高々15%程度であった。アポトーシスは早期に起きるのではなく、まず薬剤の効果により、腫瘍細胞のS期時間が延長し、これが大きなものではアポトーシスが誘導され細胞死につながることが示唆された。従って、軟部肉腫における抗癌剤の作用機序はS期時間延長を通して両者を誘発することにより腫瘍増殖が起きることが確認された。 これらの結果は近々、英文雑誌に投稿予定である。
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