1998 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠中毒症発症における新しい血漿過酸化リン脂質還元酵素の役割について
Project/Area Number |
09671716
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
岩崎 克彦 東海大学, 医学部, 助教授 (10119646)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 眞一 東海大学, 医学部, 講師 (30230808)
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Keywords | 妊娠中毒症 / 過酸化脂質還元酵素 / 過酸化脂質 / Apolipoprotein A1 / Apolipoprotein B100 |
Research Abstract |
血漿中の過酸化脂質は血管内皮細胞を傷害し、アテローム性動脈硬化症などの高血圧症の原因の一つと考えられている。妊娠中毒症に見られる高血圧については、多くの原因が考えられているが、血漿過酸化脂質に起因する血管内皮細胞の傷害が関与していると思われる。我々は、この血漿過酸化脂質を代謝、還元し、無毒化する全く新しい酵素が血漿中に存在することを見出した。そこで、この新しい血漿過酸化リン脂質還元酵素について、1.ヒト血漿より精製し、酵素学的な性質を解明する。2.妊娠中毒症患者の酵素量を測定し、各種の臨床的々パラメーターと比較検討することにより、この酵素の臨床的役割を解明することを目的とした。 一昨年度の研究において、血漿過酸化脂質還元酵素を精製していく過程でHiTrap Qカラムにて分画したところ、過酸化脂質還元活性は3つのピークに分かれ(ピークA,B,C)、ピークCの本体はApolipoprotein Alであることが判明した。本年度はピークBについても精製を進め、その部分アミノ酸配列を決定したところApolipoprotein Bl00であることが判明した。そこで、ApoAl.B100の両リポタンパクの過酸化脂質を還元する反応機構についても検討したところ、これらの蛋白に含まれるメチオニンのイオウ(S)が酸化されてスルフォキサイド(SO)に変換されていることが判明した.また、アルブミンなどに含まれるメチオニンにはこの活性は認められず、特異性の高いものであることが証明された。次に妊娠中毒症における血漿過酸化脂質還元酵素の活性、血漿グルタチオン・ぺルオキシダーゼ(PGPx)活性、および過酸化脂質量を測定した。その結果、妊娠中毒症の患者血漿では正常妊娠者に比べて過酸化脂質還元活性に約20%の上昇が認められた。同時に過酸化脂質量も15%ほど増加していたが血漿過酸化脂質の代謝で最も重要と思われていたPGPx活性に変化は認められなかった。これらの結果より、妊娠中毒症患者における過酸化脂質の上昇と対応しているのはPGPxではなく、過酸化脂質還元活性であることが判明した。今後、より詳細に検討し、血漿過酸化脂質還元活性の臨床的な役割を解明する予定である。
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[Publications] 岩崎 克彦: "妊娠に伴う貧血" 今月の治療. 6. 767-769 (1998)
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[Publications] 岩崎 克彦: "臍帯血移植における産科医の役割" 骨髄バンク. 4. 51-55 (1998)
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[Publications] 岩崎 克彦: "主な合併妊娠の薬物治療の留意点" 薬局. 49(9). 25-31 (1998)
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[Publications] Shigeyuki Koido: "LgA nephropathy and pregnancy" Tokai J.Exp.Med.23(1). 31-37 (1998)
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[Publications] Ryuichi Mashima: "Reduction of phosphatidylcholine hydroperoxide by apolipoprotein A1: purification of the hydroperoxide-reducing protein from human blood plasma" J.Lipid Res.39. 1133-1140 (1998)
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[Publications] Futoshi Okada: "Inflammatory cell-mediated tumour progression and minisatellite mutant corr-elate with decrease of antioxidant enzymes in murine fibrosarcoma cells." Br.J.Cancer. 79(34). 377-385 (1998)