Research Abstract |
平成9年度は研究実施計画書で申請した高精製骨形成因子の調整を行った. この精製したBMPで誘導される骨は,骨基質に富み,同量のリコンビナント・ヒトBMP-2の約10倍の骨誘導活性を示した.平成10,11年度は,リコンビナント・ヒトBMPを用いて,筋肉内,皮下,骨内,皮弁内の各組織に埋入し,安定した骨誘導能が得られることを確認した.また硬組織補填用生体材料,即ちハイドロキシアパタイト(HAP)およびチタン製歯科インプラントと複合して,HAPはラット下腿筋肉,ウサギ下顎骨に埋入し,3週間後摘出して検定を行った.さらにチタン製歯科インプラントはイヌ下顎骨に埋入し,3週間後,3か月後に摘出して検討を行った.結果は,多孔性HAPと複合した場合,軟X線撮影ではHAPの内外に不透過像を示し,組織所見ではHAPの孔内壁に沿って骨梁形成がみられ,その内側では骨芽細胞と脂肪髄を含む骨髄組織がみられた。インプラントとの併用では,そのフィクスチャーのスレッド間の骨形成が組織学的に確認され,インプラント表面と新生骨との接触率がBMPで促進され,さらにその所見に一致して強固な結合力が早期に得られることが確認された.これらの結果から、BMPは臨床を想定した場合,これらの生体材料に対し複合応用が十分可能であり,広範囲の骨欠損への応用では,HAPは賦形材料として有用であること,またインプラントとの併用では,1次手術と2次手術の期間を大幅に短縮し得ることが示唆された.一方,他のサイトカイン(bFGF)とrhBMP-2の併用では,低濃度bFGFでは骨誘導能の促進を認め,また高濃度bFGFでは反対に骨誘導能の抑制を認めた.今後は,安定な骨誘導能の増強効果を発現するbFGF濃度を定量し,臨床での応用が可能であるかを検討する予定である.
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