1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09760306
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
江本 由美子 九州大学, 理学部, 助手 (50211090)
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Keywords | 細胞増殖抑制 / 生理活性物質 / 豚脊髄 / MDCK細胞 |
Research Abstract |
私が豚脊髄の塩粗抽出液中から発見した細胞増殖の抑制効果を示す画分をゲルろかおよび陰イオン交換クロマトグラフィー、さらにゲルろかFPLCで部分的に精製した。そして、その構造を決めるために化学的性質を調べ、次のようなことが判った。(1)この因子の細胞増殖抑制活性は、熱(100℃、30分)、アルカリフォスファターゼ、pH変化(pH13またはpH2で20分)、タンパク質分解酵素、処理で失われなかった。(2)この因子は中性溶液中で正の電荷をもち、分子量は数百ダルトンと推定された.(3)この因子は一級アミンを含んでいたが、蛋白質やペプチド様のものではないと考えられた。 また、その作用機構を探るために細胞におよぼす生理作用を調べ、次のようなことが判った。(1)接着性細胞であるMDCK細胞の培養上清にこの因子を加えると数時間〜一日で細胞は仮足をひっこめて丸くなり接着が弱くなり、増殖しなくなった。因子の効果で形態が丸く変わった細胞は、(2)還元能力(alamar Blueによる)が低下していたことから、細胞の代謝活性が低下したことが示唆された。また、この細胞は(3)calcein AMでは染まったが、ethidium homodimerでは核が染まらなかったことから、細胞が死んでいないことが示唆された。さらに、(4)細胞の核をPI染色してフローサイトメトリーでDNA含量分布を調べたところ、因子無添加のコントロールと大きな差はなかった。また、核断片がみられなかったことから、アポトーシス(接着阻害により起こる場合があると報告されている)もおこっていないようであった。 以上のように、この因子は正の電荷をもち分解しにくい小さな分子で、細胞をあたかも仮眠状態に導くような興味深い作用を持つものであるということがわかった。
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Research Products
(2 results)