1997 Fiscal Year Annual Research Report
肝疾患における鉄の肝細胞障害の機序と対策に関する研究-フリーラジカルの関与
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09770354
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
矢野 元義 名古屋大学, 医学部, 助手 (00281460)
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Keywords | LECラット / 劇症肝炎 / 鉄 / 瀉血 |
Research Abstract |
5週齢雌性LECラットに対し、1ml/体重100gの瀉血を週2回繰り返すことにより、ヘマトクリット値35-40%と正常の80%程度の値で鉄欠乏状態を維持する実験系を、平成8年度奨励研究で確立した。これらを段階的な鉄含有量に調整した飼料(鉄含有量0.035mg/g、0.07mg/g)で飼育し、瀉血施行群と2週に1回1mlの採血検査を施行した対照群において、血清GPT値の経時的変化、劇症肝炎発症頻度、及びそれによる死亡率の比較検討を行った。飼料中の鉄含有量にかかわらず、両群とも17週齢より発黄し、劇症肝炎の発症率には差は見られなかった。死亡率では、鉄0.035mg/g群では、対照群で15例中6例、瀉血群で13例中1例、鉄0.07mg/g群では、対照群で15例中8例、瀉血群で12例中1例と、飼料中の鉄含有量にかかわらず瀉血群で有意な低下を認めた。経過中の血清GPT値は、16週齢以降、いずれにおいても瀉血群は、対照群より有意に低かった。また瀉血群において、鉄0.035mg/g群は鉄0.07mg/g群よりも低い傾向を示したが、有意差はみられなかった。また、肝炎劇症化を免れて生き延びたLECラット、各群5匹に27週齢の時点で肝生検を施行し、肝組織中の鉄、銅の含有量を測定したところ、鉄の含有量は、鉄0.035mg/g瀉血群、鉄0.07mg/g瀉血群、鉄0.035mg/g対照群、鉄0.07mg/g対照群の順に高くなり、それぞれ、瀉血群と対照群の間で有意差を認めたが、飼料中の鉄含有量による有意差は認めなかった。また、銅の含有量には各群間で、差を認めなかった。今後、各群の生存例において、肝癌の発生率の検討を行っていくとともに、free radicalの関与の有無、apoptosisの出現頻度を検討していく予定である。
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