1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09834005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三牧 陽子 大阪大学, 留学生センター, 教授 (30239339)
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Keywords | 待遇レベル管理 / 待遇レベル・シフト / 基本的待遇レベル |
Research Abstract |
敬語行動の社会言語学的研究から、日本語は英語と比較すると「働きかけ方式」の用法よりも「わきまえ方式」が強い言語であると言われている(井出他(1986))。日本語で対面コミュニケーションする場合、相手との人間関係に応じて待遇レベルを使い分けることは、主に「わきまえ方式」によると説明されうる。しかし、筆者は同一の相手との同一談話の中でも待遇レベルがシフトすることも多いことに注目し、待遇レベル・シフトが「働きかけ方式」としてのコミュニケーション上の機能を果たしていると考えた。そこで、対話の開始時に設定された基本的待遇レベルが、コミュニケーション上の機能によっていかにシフトするかという点に焦点を絞って分析するため、日本語母語話者(大学生)の初対面同性2者間計40組について15分間の自由会話およびフォローアップインタビューを録画録音した。その際、同一被験者が同一学年群および異学年群に参加するように組み合わせた。収集した対話資料は、非言語行動も含め15分の談話全体をすべて文字化した。現在、各文の待遇レベル、基本的待遇レベル、待遇レベル・シフトの頻度・方向・大きさ・トピックおよび談話の構造との関係を含めたデータベースを作成中である。 フォローアップインタビューからは、次のようなことが明らかになった。 1.学年差(同学年か異学年か)で基本的待遇レベルを変えたと答えた被験者が多く、わきまえ方式によって基本的持遇レベルが意識的に設定されていることが確認できた。2.初対面の相手との会話を円滑に進めるために、共通の話題を探し、話題が途切れないように努める。(積極的ポライトネス)3.待遇レベルやことば遣いはある程度意識的に管理されている。4.相手と待遇レベルを揃えたと答えた被験者もいる。5.相手との心理的距離を調節するため、待遇レベル・シフトを意識的に実行している例もある。
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