2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09834005
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三牧 陽子 大阪大学, 留学生センター, 教授 (30239339)
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Keywords | 待遇レベル管理 / 基本的待遇レベル / 待遇レベル・シフト / ポライトネス / 基本的待遇レベル組み合わせパターン / 基本的待遇レベル設定までのプロセス |
Research Abstract |
【目的】対話における「待遇レベル管理」の実態およびコミュニケーション上の機能を実証的に明らかにするために平成9年度〜11年度にかけて収集、データベース化した2者間の対面自由会話資料について、次の2点を中心に質的・量的に分析した。 (1)対話相手に応じて設定された基本的待遇レベル: 組み合わせパターンおよび初対面会話においては基本的待遇レベル設定までのプロセス (2)対話中に観察された待遇レベル・シフト: 頻度、方向、大きさと、親疎、基本的待遇レベル、談話構造、会話の内容などとの関係 【結果】(1)基本的待遇レベルの設定プロセス:初対面会話においては、相手に関する情報が皆無の状態で会話が開始された直後は、丁寧体で会話を開始した話者が圧倒的に多い。相互の属性(特に学年)が明らかになるとともに、基本的待遇レベルの選択・設定が開始されるプロセスが観察された。異学年ペアの場合の上学年話者のパターン:(1)学年差が明らかになると同時に普通体に基本的待遇レベルを設定する(2)発話を重ねるうちに徐々に普通体に移行(3)丁寧体を基本的待遇レベルとして設定。一方、下学年話者については、基本的待遇レベルが女性群では全員が丁寧体であったのに対し、男性群では普通体を選択した話者が30%を占め、男女差が確認された。 (2)基本的待遇レベルが丁寧体であっても、談話中の普通体への待遇レベル・シフト(相手の発話の繰り返しなども含む)あるいは、待遇レベル表示の対象とならない普通体でなされる独話や引用形式を活用するというような様々なディスコースストラテジーを用いて、話者は下位であるとか疎の人間関係であることに対する「わきまえ」を示しつつ、丁寧体のもつ堅苦しさを緩和したり相手に対する心的距離を調節したりしながら、つまり「働きかけ」ながら、ダイナミックにコミュニケーションを遂行している様子が明らかになった。
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