1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09839040
|
Research Institution | National Museum of Nature and Science,Tokyo |
Principal Investigator |
武田 正倫 国立科学博物館, 動物研究部, 部長 (20000143)
|
Keywords | 造礁サンゴ / 琉球列島 / サンゴガニ属 / ヒメサンゴガニ属 |
Research Abstract |
今年度は、昨年度に引き続き、琉球列島八重山諸島で採集されたサンゴガニ類の研究を行った。とくに、プロカメラマンの協力によって得た石垣島および西表島産標本の生時の色彩を参考として種の同定を試みた。サンゴガニ属Trapeziaにおいては、交尾器の形態も種による相違があり、また、ほとんどの種に固有の色彩が認められたため、生時サンゴの枝の間においても種を識別することが可能であることが判明した。しかし、赤紋を有する種においては、斑紋の大小と密度に大きな変異があり、それが種としての相違であるのか、種内変異であるのか、一部の種においては今年度の調査では明らかになっていない。赤紋をもつ種(群)は個体数が比較的少ないこともあり、形態学的研究だけで結論を出すことは容易でなさそうである。今後の分子分析の研究の必要性が感じられる。 一方、ヒメサンゴガニTetralia属においては、サンゴの枝の間において青色、青紫色ないし青緑色など、さまざまな色および濃度に、いかにも蛍光を発するような美しい種が多いが、採集するとたちまち黒ずんだ色に変わる場合が多い。従来からの学名の混乱はこのような色彩変異と変色に原因があると考えられる。また、成長段階(個体の大きさ)によって、額縁や側縁の黒帯の状態が異なる種もあるようである。すべてが成長段階における変化であるのかどうか、さらに多数の標本を調べる必要性が感じられた。しかし、現実にはサンゴを壊すことができないため、多くの標本を効率よく採集することが難しい状態にある。また、多数の個体の採集と色彩の記録(撮影)を平行して進めることの困難を痛感した。
|